免疫不全症



免疫が働かなくなる病気


免疫系は広がりを持ったシステムからなっているので、
免疫関連の遺伝子異常があると、いろいろな形の免疫不全症が引き起こされる。

最近の遺伝子関連の研究の進展により少しずつある先天性免疫不全症が
どのような遺伝子異常によってひきおこされているのかが解明されつつある。

また、エイズウイルス感染のように後天的に免疫不全症が引き起こされることもある。
そして、働きすぎや心の悩みは交感神経緊張をもたらすが、その結果免疫不全状態となることもある。

いずれの原因で起こる免疫不全症も、その人を感染しやすくしたり(易感染性)、がん化を誘発したりする。


先天的な免疫不全症



重症複合免疫不全症(SCID)
T細胞とB細胞の両方を欠損する。

生後まもなく易感染性を示し、カンジタ、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などの
本来健康人であれば無害なはずの微生物による感染症が引き起こされる。

commmon variable免疫不全症(CVID)
B細胞の分化、成熟の異常による。
先天性免疫不全症の中で最も頻度が高く、T細胞にも多少の異常がでる事が多い。

中耳炎、気管支炎、肺炎などの感染症を反復する。
下痢などの消化症状を伴うことも多く、幼児期以降に発症する。

伴性劣性無γグロブリン血症(XLA)
ブルトン型無γグロブリン血症とも言われる。

男児のみに発症する。
生後半年ごろから肺炎、骨髄炎、髄膜炎などの細菌感染症を引き起こすようになる。

免疫系以外の異常を合併する免疫不全症
Wiskott-Aldrich症候群(WAS)は血小板減少を伴う免疫不全症として知られてきたが、
最近の研究でシアロ糖タンパク質であるCD43分子を支配する遺伝子異常であることが明らかになっている。

毛細血管拡張性運動失調症(AT)は、毛細血管拡張と小脳性の運動失調を伴う免疫不全症である。

DiGeorge症候群は副甲状腺機能低下、胸腺欠損、目、耳、あご、唇、その他多くの異常が合併した免疫異常賞である。
上記のような器官は、個体発生の際にえらから発生してくるので、この発生過程に異常が生じて起こるものと考えられる。

慢性肉芽腫症(CGD)
マクロファージの殺菌作用が障害されているために、常在菌による肺炎や胸腺炎を繰り返し、肉芽腫症を形成していく。
リンパ節炎を繰り返すことも多くある。

Chediak-東症候群
生体の顆粒保有細胞の機能が同時に障害される。


後天的な免疫不全症-エイズ



後天的な免疫不全症というとエイズ(Acquired Immuno Deficiency Syndrome,AIDS)が有名である。

1970年代後半あたりから原因不明の後天性免疫不全症疾患者が見出されていたが、
1980年代に入ってエイズウイルス(HIV)感染によって発症していることが明らかになった。

感染したHIVはヘルパーT細胞膜上にあるCD4分子を介して、このT細胞に感染する。
しかし他の免疫細胞や生体細胞にも感染できる。
CD4+T細胞は、HIV感染によって年余の期間を経て減少し、免疫不全症となる。
T細胞の減少が進行すると、健康人では普段は無害なカリニ原虫などの感染症が引き起こされるようになる。

CD4+T細胞の減少が目立たない時期は無症候期と呼ばれ、10年前後はこの期間が続く。
この期間には抗HIV抗体ができ、HIVウイルス抗原は不顕性化している。
そしてエイズ期に入るとT細胞が激減し、ウイルスが増殖し始める。
エイズの発症である。
母子感染例ではほとんど子供のうちから発症が始まる。

エイズになると治癒しにくいので、各種治療によって無症候期を延ばす試みがなされている。
エイズ 免疫不全