宿主域と特異性

ウイルスの宿主域と特異性



宿主域 host range

ウイルスは極端に小さく、構造的にも増殖戦略からみてもお互いに違っているが、
あらゆる生命体(宿主)に感染する能力を持っている

ウイルスの宿主域とはウイルスが感染できる宿主のスペクトルである。
別々のウイルスがそれぞれ細菌、カビ、藻類、原生生物、植物、脊椎動物、
あるいは無脊椎動物にさえ感染できる。
しかし、多くのウイルスの感染はただ一種類の宿主
あるいはその宿主のただ一種類の細胞や組織に限定される。

ウイルス特異性 viral specificity

ウイルスのもう一つの重要な性質であるウイルス特異性とは
ウイルスが特別な種類の細胞に感染することである。

例えばいぼの原因となるある種の乳頭腫ウイルスは、
皮膚細胞にのみ感染する点で、その増殖戦略において非常に特異的である。
対照的に、潜伏感染するサイトメガロウイルスは、唾液腺、胃腸、肝、肺やその他の臓器を攻撃する。
また、胎盤を通過して胎児組織、特に中枢神経系に攻撃を加える。

何人かのあるウイルスの感染者が違った症状を呈することを見つけたとする。
これは1ウイルス、1疾患という概念を擁護できなくしてしまう。

ウイルス特異性は主にウイルスがどの細胞に吸着できるかどうかで決まってくる。

吸着は、宿主細胞表面にある特異的受容体の存在とウイルスカプシド、
あるいはエンベロープ上の特異的接着部位に依存する。

特異性はまた、適当な宿主側の酵素やウイルスが増殖するために必要なほかのタンパクが
その感染細胞内で利用できるかどうかによっても影響を受ける。
最終的には特異性は、増殖したウイルスが細胞から放出され、
周りの細胞に感染を広げられるかどうかに影響される。