がんはうつる!?



癌にもいろいろあって、親から子に遺伝する家族性のがん(網膜がん)、ヒトから ヒトにうつる感染性のがん、このどちらでもない内因性のがん(つまり普通のがん) の3種類がある。それにも関わらず、がんは遺伝子ないとか、うつらない、など の迷信を信じている人が多い。これはとても気がかりなことである。

がんの20%は感染症である


これ以外にも、子宮頸がんを発生させるヒトパピロマウイルス(HPV)、白血病 を発生させるヒトT細胞白血病ウイルス、胃がんを発生させるヘリバクター・ピ ロリという細菌が知られている。したがって、感染症によるがんは、少なめに見 積もっても15%である。
また、HIVに感染した患者の免疫力が衰えて発症する際に、カポジ肉腫に苦し むことが多い。このカポジ肉腫は皮膚がんの1種なのである。
そんなわけで、実際にはがんの20%はうつる病気だと言えるのである。



・ここでは、性行為を通して感染する発がん性のウイルス、HPVについて話 そう。

HPVは人にイボを発生させるウイルスで、今のところ約70種類が見つかって いる。HPVが感染するとイボができるが、これは良性だから心配はいらない。
ペニスにもイボができる。このイボは尖圭コンジロームという腫瘍である。腫瘍 はすなわち癌だと思われる方もいるだろうが、腫瘍にも悪性と良性がある。尖圭 コンジロームは良性であるから、そんなに心配しなくていい。だが、HPVによ って発生する悪性の腫瘍は陰茎がんであるので要注意だ。
良性と悪性の腫瘍という大きな違いはあるにせよ、尖圭コンジロームも陰茎がん も、性行為を通して感染したHPVによるものである。
悪性と良性の腫瘍を決めるのはHPVの型であって、誰とどんな場所でどのよう に関係をもつかではない。HPVの16型は取り分けてタチが悪く、子宮頸がん や陰茎がん患者のほとんど全員(90%)で見つかっている。このように子宮頸が ん、陰茎がん、それから尖圭コンジロームもSTD(sexually transmitted diseases: 性感染症)の1つなのである。

アメリカの疫学調査で気がかりなことが1つ報告されている。それは、ペニスに イボのある男性と性交した女性の1/3はがんになりつつある「前がん状 態」にあることだ。前がん状態とは、細胞が正常な成長と増殖のサイクルか ら離れ始め、がん細胞に近づきつつある状態のことで、癌細胞に変身する少し手 前ということだ。

ペニスのイボはHPVの6型と11型によって発生する尖圭コンジロームであっ て、発がん性の高い16型によるものではない。しかし、16型に感染しやすい のだから、男性はペニスにイボを見つけたら専門の病院を訪ねるのがいい。