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人工繁殖技術で保護

まず生物を繁殖させるには、親が生み育てる「自然繁殖」、飼育係など人間が孵化や子育てをする「人工繁殖」の二点があります。今回はこの中でも種の保護と回復に大きな役割を果たしている「絶滅危惧種の人工繁殖技術」人工受精・核移植(クローン技術)について取り上げて紹介していきたいと思います。

人工受精

まず「人工受精」についてです。具体的には雄から採取した精子を人工的に雌の生殖器内に挿入し、受精を促進する方法、精子と卵子を体外で受精させ、初期の胚を作り出し、雌の体内に戻して育てる方法などがあります。この方法は自然交配が難しい動物(距離が離れている、または繁殖期が異なるなど)や数が少ない動物、大型哺乳類などの場合に適している方法です。

人工受精の利点と欠点

利点

前述したように、自然交配が難しい場合や数が少ない場合に繁殖が行えます。また、限られた生息数の中で※近親交配が発生する可能性を減らし、異なる個体からの精子を用いることで、健康な子孫を増やすことができます。その他にも、雌雄を直接接触させる必要がないため、接触による病気の感染リスクを減らすことができます。

※近親交配・・・家族のように血のつながりが近い動物同士が子どもを作ることです。もし行うと病気や体の弱い子どもが生まれやすくなることがあります。

欠点

まず、欠点として人工授精は成功率が必ずしも高くない点があります。特に絶滅危惧種の大型哺乳類(象、パンダなど)は人工授精の成功率が20〜40%程度で、かなり成功する確率が低いです。また人工授精は精子や雌の体調に大きく影響されるため、それが原因で受精しないこともあります。

核移植(クローン技術)

次にクローン技術を利用して、絶滅危惧種の遺伝情報を持つ生物を増やす方法を紹介します。

クローン技術では、ドナー個体(ほかの個体に細胞や組織などを提供する動物)から細胞を採取し、その核を他の種または同種の卵子に移植して、同じ遺伝情報を持つ個体を作り出すという技術です。具体的な例でいうと、野生で絶滅したガウル(牛の一種)のクローンが、2001年に生まれた事例があります。

※画像はイメージです。

クローンの技術で絶滅危惧種を復活させることは、種の存続に大きく貢献できる一方で、「絶滅することもまた自然の一部」という考えタイムカプセルのときにもお話した、倫理的考え方もあり、自然の選択で消えてしまうはずだった種を人の手で復活させることは、「自然への過度な干渉」として批判されることもあります。また、クローン個体は同じ遺伝情報を持つため、病気や環境の変化へ適応する力が低く、種全体が生存の危機にさらされる可能性があります。ほかにも、クローンを作成する過程で代理母となる動物や、誕生するクローン個体への負担が大きいため、動物の福祉的な観点からも慎重に考えることが大切です。

また、クローン技術に頼りすぎると、本来重要である生息地保護や環境保全が後回しになるリスクも発生します。クローン技術は短期的な解決策としては役に立ちますが、長期的な目で見れば自然環境の改善や生息地の保全が先決だと考えられます。

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