一寸法師現代語訳

一寸法師原文は難しかったですか？きちんと意味は把握できていたでしょうか、
この現代語訳を読んで確認してみましょう。
分からなかった言い回しや文章の意味が、良く分かるようになっています。
慣れ親しんでいた昔話『一寸法師』とは、元の古文版一寸法師は
こんなにも違いが有るのです・・・！

それほど古くない頃、津つの国（大阪のあたり）の難波なにわの里に、立派りっぱなおじいさんとおばあさんが住んでいました。おばあさんは40歳になっても子供が居ないことを悲しんで、住吉すみよしの住吉大明神すみよしだいみょうじん(神社)に子供を授さずけてくれるよう祈いのったところ、大明神だいみょうじんはおばあさんを哀あわれとお思いになり、おばあさんは41歳になって、子供が出来ました。ただ事ではないながら、おじいさんは大変喜よろこびました。
やがて10ヶ月たち、おばあさんは可愛かわいい男の子をもうけたのです。

しかし、その男の子は生れ落ちてからずっと、背が一寸いっすん(約3センチ)しかなかったことから、その名を一寸法師いっすんぼうしと名づけられました。
年月を経へて、１２、３歳になるまでおじいさんとおばあさんは一寸法師いっすんぼうしを育てましたが、背は人の大きさにはなりません。
やがておじいさんとおばあさんは自分達に何の罪つみがあってこんな只者ただものではない、化け物ばけもののような子を住吉大明神すみよしだいみょうじんより授さずかったのだろうか、呆あきれたことだとつくづく思い、不憫ふびんなことに
「あの一寸法師いっすんぼうしのやつをどこかへやってしまいたいと思う」
と話す有あり様さま。
それを聞いた一寸法師いっすんぼうしは、親にこんな風に思われるなんて悔しいだがどこかへ行ってしまおうと考え、刀を持たなくてはと思いおばあさんに針はりを一つもらい、麦わらを鞘さやにして都へ行こうとしますが、船がなくてはと思いまたおばあさんに「おわんと箸はしとを下さい」と言って受け取り､名残惜なごりおしく感じつつも旅立たびだちました。
一寸法師いっすんぼうしは、住吉すみよしの浦うらより、おわんを船として乗り込み、都みやこへ上のぼっていったのです。

　住みなれし難波なにわの浦うらを立ち出でて　都みやこへいそぐ我が心かな

やがて鳥羽とば(三重県）の津つに着いた一寸法師いっすんぼうしは、その湾に船を乗り捨てて都みやこへ上り、ここはどこだと辺あたりを見回しても、四条五条しじょうごじょう（都みやこの通り）の様子はすごい物で、一寸法師いっすんぼうしは言葉もありません。
さて、三条さんじょうの宰相殿さいしょうどのという人を訪たずね、「もの申もうさん」と言った所ところ、宰相殿さいしょうどのはこれを聞きつけ、面白おもしろい声だと思い、縁側えんがわの端はしへ出ていって周まわりを見ましたが誰の姿すがたも見えません。
一寸法師いっすんぼうしは踏ふみ殺ころされそうになり、宰相殿さいしょうどのの下駄げたの下で「もの申もうさん」と言いました。宰相殿さいしょうどのは不思議ふしぎに思い下を見て一寸法師いっすんぼうしを見つけると、実に面白おもしろい者だとお笑いになりました。

そうして時は経たち、一寸法師いっすんぼうしは16歳になりましたが、背は元のままです。
さて、宰相殿さいしょうどのには13歳になられる姫君ひめぎみ（むすめ）がいらっしゃいます。姫君ひめぎみはとても美しく、一寸法師いっすんぼうしは姫君ひめぎみを見初みそめ、なんとしても自分の妻つまにしようと計画し、ある時神前しんぜんに供そなえるお米を取り、茶袋ちゃぶくろに入れ、姫君ひめぎみの寝ているところで策略さくりゃくをめぐらして米を姫君ひめぎみのお口にぬり、茶袋ちゃぶくろだけを持って泣き出しました。

宰相殿さいしょうどのがこれを見て一寸法師いっすんぼうしにわけを聞くと、一寸法師いっすんぼうしは「自分が取り集めて置いておいた姫君ひめぎみのお米を、取ってしまわれた」と言います。宰相殿さいしょうどのは大変お怒りになり、そして当のお米は姫君ひめぎみのお口に本当に付いています。宰相殿さいしょうどのは
「実に偽いつわりない事実。このような者を都みやこにおいては置けない。いかにも居なくなってしまえばいい」
と、一寸法師いっすんぼうしに姫君ひめぎみを殺ころしてしまうよう言い付けました。

一寸法師いっすんぼうしはすかさず、
「取られたものは自分のものなのだから、どうにでもさせて下さい」
と、頼たのみ、姫君ひめぎみを助け、心の中ではとても喜よろこんでいる様子です。姫君ひめぎみはただ夢のような心地で、呆あきれ果てていらっしゃいます。

一寸法師いっすんぼうしは「早く早く」とどんどん事をすすめ、遠くへ行くような様子で都みやこを出、足の進むに任せて歩いていきます。かわいそうなことに、姫君ひめぎみは一寸法師いっすんぼうしの前を立たされていらっしゃいます。哀あわれな宰相殿さいしょうどのは、ひきとめたいと思われましたが、継母ままははの姫君ひめぎみへのいじめのせいで姫君ひめぎみをとどめさせることが出来ません。姫君ひめぎみには使いの女達も付き添わず、驚いたことだと思い、一寸法師いっすんぼうしたちは
「こうなったらどこへでもいきましょうが、どうせなら難波なにわへ行きたいものだ」
と、鳥羽とば(三重県)の津つより船に乗りこみました。

そのうち、一寸法師いっすんぼうしたちは風の強い、風変ふうがわりな島へと着きました。船を降りて見てみると、人が住んでいるようには見えません。風は気味悪きみわるく、島へと吹き上げています。ああしようか、こうしようかと思い迷っていると、どこからともなく鬼おにが二人現あらわれました。一人は手に打うち出での小槌こづちをもっています。鬼おには
「小さい奴やつは呑のんでしまい、女房にょうぼうを取ってしまおう」
と言い、一寸法師いっすんぼうしを口から呑のんでしまいますが、一寸法師いっすんぼうしは目から飛び出してきます。鬼おには言いました。
「これはくせものだ。口をふさげば目から出てきてしまう。」

一寸法師いっすんぼうしが鬼おにに呑のまれるたびに目より飛び出すと、鬼おにたちは恐おそれおののいて、
「これはただ者じゃない。地獄じごくに反乱はんらんでも起こったようだ。ただ逃げよ」
と、打うち出での小槌こづちはじめ、杖つえ、ムチ、何から何まで打うち捨すてて、極楽浄土ごくらくじょうどの北西ほくせい、いかにもな暗闇くらやみのところへ逃げていきました。

さて、一寸法師いっすんぼうしがこれを見て、はじめに打うち出での小槌こづちを激はげしく打うち、
「我々われわれが背よ、大きくなれ」
と言うと、程ほどなく背が大きくなりました。

疲れていたことから飯めしを打うち出だすと、いかにもおいしそうな飯めしがどこからともなく現あらわれます。思議ふしぎなしあわせとなりました。
その後、一寸法師いっすんぼうしは金銀財宝きんぎんざいほうを打うち出だして、姫君ひめぎみと一緒いっしょに都みやこへ戻もどり、五条ごじょうに宿やどをとって１０日ばかり過ごしましたが、このことを隠かくさなかったので（大して隠かくしても居なかったので）宮中きゅうちゅうに呼ばれることになりました。大王(帝)は一寸法師いっすんぼうしをご覧らんになり、
「実に美しい少年である。いかにも誠実せいじつそうだ」
と一寸法師いっすんぼうしの素性すじょうをお尋たずねになりました。

一寸法師いっすんぼうしのおじいさんは堀河ほりかわの中納言ちゅうなごんと言う人の子供であり、誰かの嘘うその噂うわさにより田舎いなかに流ながされ、そこで生まれた子供でした。
おばあさんは、伏見ふしみの少将しょうしょうと言う人の子供で、幼おさないときに父母に先に死なれてしまったそうなのでした。

このように、一寸法師いっすんぼうしは心にも卑いやしいところがないので、殿上てんじょうへ呼ばれ、めでたいことに堀河ほりかわの少将しょうしょうになることを認められたのです。
一寸法師いっすんぼうしはおじいさんとおばあさんを都みやこに呼んで、尋常じんじょうでないほどに大切に世話せわをしました。

そのうちに少将殿しょうしょうどの(一寸法師いっすんぼうし)は中納言ちゅうなごんに出世しゅっせさせてもらい、心も容姿ようしも生まれながらに一般いっぱんの人よりも優すぐれていたので、帝みかどは堀河ほりかわ家の一族いちぞくに対する親愛しんあいを厚あつくお思いになりました。
宰相殿さいしょうどのも一寸法師いっすんぼうしを訪おとずれ、お喜よろこびになりました。

その後、一寸法師いっすんぼうしには３人の子供が出来、めでたく栄さかえたと言うことです。
この世よのめでたいことの中で、住吉大明神すみよしだいみょうじんのお考えにより、いつまでも栄さかえられたというこのことを越こすものはよもやあるまいと、世間せけんでは噂うわさし合っていたそうです。

一寸法師現代語訳、いかがでしたか？
どの程度古文版一寸法師を読み取れていましたか？一寸法師のはかった姫君を妻にするための策略について、あなたはしっかり理解できていましたか？
昔話では大きくなっておじいさんおばあさんと幸せに暮らすだけであった一寸法師は、実は大変な重役になっていつまでも栄える、という更なる幸せを手にしていたのです！

これから一寸法師研究を読んでみてもOKですし、この後は文法を学習してみる、というのも古文と友達になる一つの方法です。
この後問題を解きなおしてみる、というのもいいですね。ご自由に各所を回ってみてください。

一寸法師読解問題演習　古文文法学習