銀河鉄道巡りの旅
+ カ ム パ ネ ル ラ +

 十字になった町のかどを、まがろうとしましたら、向うの橋へ行く方の雑貨店の前で、六七人の生徒らが、めいめい烏瓜の燈火を持ってやって来るのを見ました。ジョバンニの同級の子供らだったのです。
 「川へ行くの。」
ジョバンニが云おうとして、少しのどがつまったように思ったとき、
 「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ。」
さっきのザネリがまた叫びました。
 「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ。」
すぐみんなが、続いて叫びました。

 ジョバンニはまっ赤になって、もう歩いているかもわからず、急いで行きすぎようとしましたら、そのなかにカムパネルラが居たのです。カムパネルラは気の毒そうに、だまって少しわらって、怒らないだろうかというようにジョバンニの方を見ていました。

 ジョバンニは、なんとも云えずさびしくなって、いきなり走り出しました。


黒い丘の天気輪の柱へ向かって走り出す…⇒