文学賞選考の仕組みと問題点
(1).多数決制
文学賞はスウェーデンアカデミーが選考担当の事務をします。まずノーベル委員会は600から800の推薦状を発送し、そしてそこから候補者リストを作ります。(候補者は100から150人といわれています)。その後アカデミーと協力して、さらに候補を絞り、委員の意向も汲んで最終的に6から7人の最終候補リストを作るのです。アカデミーでの議論の後、例会で全員参加の無記名投票(候補者の名前を書いた投票用紙は、事務局長が手にして回るビールマグに入れられます)により受賞者は決定されるにのです。ちなみにこれは単純多数決制です。
(2).言語の壁
ノ−ベル賞選考の問題点として前々から挙げられているのは、言語や文化の壁です。すなわち、選考が、どうしても欧米に英語文化圏に偏りがちであることです。仮に日本で推薦依頼を受けた人がいたとして、その人が日本語で文章を書いた場合、「その作品の評価に多大な労力と努力をせねばならない場合、推薦の検討をさらに加えなくてもよい」というノーベル財団規約の条項により、おそらく却下されてしまうでしょう。
(3).例外について
1986年文学賞受賞者、ナイジェリアのウォレ・ショインカ氏(アフリカ初のノーベル受賞者)は英語で自分の書を著しています。82年のマルケス氏や、67年のグアテマラのアストゥリアス氏も書をスペイン語で書いています。別ページにあるインドのタゴール氏(アジア初)も自らの文章を英語に訳さねばならないという壁があったのです。徐々に薄れつつはありますが、まだまだ第三世界は宗主国言語の作品が選ばれる傾向は薄れないでしょう。「サンプル翻訳(言語になじみがなく、翻訳が十分でない場合に、部分的に翻訳をすること)」もありますが、それでもまだ問題は完全に解決される訳ではありません。 もちろん例外もあります、88年に文学賞を受賞したナギーブ・マフフーズ氏は、その代表作「バイナ・ル・カスライン」などのアラビア語作品が評価されての受賞でした。これは画期的なことで、受賞理由は、「全人類に適用可能なアラブ的文章表現の芸術」であるから、でした。さらに日本の川端康成氏もまた、稀な受賞例であったといえます。(別ページに記載)。