WHAT'S THE ENERGY?

■熱と内部エネルギー

熱にも力学的エネルギーと同じように、エネルギーの移動が熱の形で存在します。まず力学的エネルギーと熱の間にはどのような関係があるのでしょうか。

ここでまた実験をしてみましょう。
マッチ棒をマッチ箱でこすります。するとマッチには火がつきます。この実験から力学的な仕事が熱に変換できることが分かります。マッチをするというのは力学的な仕事で、その結果熱が得られたのです。他にも鉛筆削りで鉛筆を削った後、鉛筆の先端を触ってみると少し温かくなっていたりと、日常的に仕事は熱エネルギーに変換されているのです。
この熱に変換されるときに出すエネルギーは太古から利用されていました。昔は乾いた木にくぼみをつけて別の木でこすり合わせて火を起こしていました。これも力学的エネルギーが熱に変換される例の一つです。

ここで、力学的エネルギー保存の話に戻してみましょう。
エネルギーが完全に保存されるのは、理想的な場合、つまり摩擦などの抵抗が全く無い場合だけです。理想的には、ピンポン玉ははじめに落とした位置まで跳ね上がり、永久にこの高さが変わりません。運動エネルギーが100%全く変わらない量で位置エネルギーに変換されるのです。
しかし、現実ではピンポン玉はだんだん跳ね上がらなくなり、最終的には地上の上に止まってしまいます。ピンポン玉の力学的エネルギーは何処へ行ったのでしょう。<運動・位置エネルギー>の項で、非力学的エネルギーとして変換されたと述べました。その非力学的エネルギーは、目に見えない形で存在しているのですが、気をつけていれば気付くことができるはずです。

そのエネルギーはピンポン玉と床の内部エネルギーに変換されてしまったのです。つまり、さきほど話していた熱に変換されたのです。ここから、力学的エネルギーと熱には密接な関係があるということがわかると思います。
ピンポン玉が床にぶつかるごとに、力学的エネルギーの一部は、物体の分子に渡されます。このような分子はだんだん速く動くようになります。そして分子全体の内部エネルギーが大きくなり、物体は熱を持ちます。同じことは、木と木をこすり合わせたときにも、ノコギリでなにかを切るときにも起こります。物体全体の運動の力学的エネルギーは、その物体の分子の動きという力学的エネルギー、つまり内部エネルギーに変換します。だから、物体はその温度を上昇させるのです。


力学的仕事が熱に変わるとき発火する


分子一つは小さくても全体としては
大きな力が及ぶことになる

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