ミツバチと農薬

 水田や畑にヘリコプターで害虫を殺すために農薬が撒かれると、そこで花の蜜を集めていたミツバチたちは死んでしまいます。人間には害がないほど微量の農薬を使っているのでしょう。しかし、ミツバチやそこに生きている益虫たちを簡単に殺してしまうほどの量の農薬を毎年撒いているのです。また、農薬は雨よって川や海へ流れていき海洋汚染にも繋がります。
 一昔前までは、養蜂家は農作物の花粉と花蜜を取るために農地に巣箱を置かせてもらっている立場だったので、農薬のせいでミツバチが死んでも泣き寝入りするしかなかったことが多かったそうです。農薬被害の一つに、米のカメムシ駆除農薬の被害があります。
 米は自家受粉するのでミツバチの必要はありません。しかし、米の花は夏の花粉源としてミツバチにとって重要なものです。米に農薬が撒かれたせいでミツバチが死んで、賠償請求がしたくとも、『置かせてもらっている』立場なので強く出られないのです。  近年日本で人気な害虫駆除の農薬は、ネオニコチノイド系農薬というものです。たばこに含まれるニコチンという物質は、昆虫の脳を狂わせます。そのような物質が入っている農薬なのでネオニコチノイド系農薬という名前なのです。野菜に撒かれた農薬を人間が摂取しても、一度にとる量が多くなければすぐに排出されるので害はありません。ですから、毎日の食事とともに少しずつ体の中に溜まって行き限度を超えると病気になる、ということはないのです(もちろん農薬の原液を一気飲みするのは危険ですのでやめましょう)。この農薬は、CCD(蜂群崩壊症候群)の原因の一つではないかといわれており、フランスなど使用が禁止されている国もあります。しかし日本で規制はなく、むしろ規制緩和がされています。
 意外なことに、農村部より実は都市部の方がミツバチたちにとって住み心地が良いのかもしれません。都市部では多くの住人が花を手入れしているので蜜源には困りませんし、農村部のように農薬の影響を受けることも少ないのです。



参考文献
Rowan Jacobsen 『蜂はなぜ大量死したのか(原題 Fruitless Fall)』 文芸春秋、2009年
久志冨士男 『ニホンミツバチが日本の農業を救う』 高文研、2009年
一般社団法人 日本養蜂協会 ホームページhttp://www.beekeeping.or.jp/ 越中矢住子『ミツバチは本当に消えたか』 SoftBank Creative、2010年
銀座ミツバチプロジェクト ホームページ  http://www.gin-pachi.jp/owner