課題>倫理の問題 ヒトゲノム解析

ヒトゲノムの解析終了

倫理的問題として、デザイナーベビー以外にも問題があります。2000年に米欧日の国際共同プロジェクトや民間企業によって人間の遺伝情報の総体の解読をほぼ終了したことを発表しました。 ヒトゲノムの解読によって遺伝子治療や遺伝子診断などバイオ医療が発展することには間違いはないのですが、いい点ばかりではありません。デメリットを列挙すると、

  • 個人情報の保護の責任
  • プライバシー漏洩などの対策
  • 差別が起きる可能性

などがあります。これらを解決するには、厳重な罰則、規制が必要となります。科学技術会議生命倫理委員会はヒトゲノム解析に 関する基本原則を取りまとめ、その中ではインフォームドコンセントの取得や個人遺伝情報の厳重な保護を求めています。 また、国は「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」を取りまとめられました。

ヒトゲノムと人権に関する世界宣言

世界では、1997年に国際連合が「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」を採択しました。この宣言ではヒトゲノムに関する研究によって、 人間の尊厳、人権、自由が損なわれることを禁止し、差別を禁止しています。

  • (序文より)「ヒトゲノムに関する研究及びその結果の応用が個人及び人類全体の健康の改善における前進に広大な展望を開くことを認識し、しかしながら、 そのような研究が人間の尊厳、自由及び人権、並びに遺伝的特徴に基づくあらゆる形態の差別の禁止を十分に尊重すべきことを強調し、 この宣言を採択する。」(一部変更あり)


  • (第5条より)「個人のゲノムに影響を与える研究、治療又は診断は、それに伴う潜在的な危険や利益の厳格な事前評価の後にのみ、国内法上のその他の要件に従って、着手することができる。」


  • (第6条より)「何人も、遺伝的特徴に基づいて、人権、基本的自由及び人間の尊厳を侵害する意図又は効果をもつ差別を受けることがあってはならない。」


  • (第13条より) ヒトゲノムに関する研究の枠組みにおいては、その倫理的・社会的含意ゆえに、研究の実施並びに研究結果の発表及び利用における細心さ、慎重さ、知的誠実さ及び高潔さなどの研究者の活動固有の責任は、 特別の注意を払う主題となるべきである。公的及び私的な科学政策立案者もまた、この点に関し、特別の責任を有する。

ヒトゲノム解析によって遺伝子治療がより発展していくと考えられていますが、プライバシーの面でもまだ問題があります。 将来的には一人一人がゲノム情報を持ち、自分のゲノム情報が重要な個人情報の一つとなるかもしれません。 ゲノム情報を有効活用するためには、バイオテクノロジーの以外の技術の発展も必要になるでしょう。

参考文献 書籍

  • トコトンやさしい ゲノム編集の本
    (宮岡佑一郎、B&Tブックス 日刊工業新聞社・2019年 3月19日)
  • ゲノム編集の光と闇-人類の未来に何をもたらすのか)
    (青野由利 ちくま新書・2019年 2月10日)
  • マンガでわかるゲノム医学
    (水島-菅野純子 著 羊土社・2018年 8月5日)
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