【宇宙ミッションが次の世代を育てる】

「ここまでは『はやぶさ』プロジェクトについてお訊ねしましたが、最後に今後のことについて聞かせてください。
今後の日本の惑星探査にどのようなことを期待されますか?

「まさに『不思議なこと』の塊である惑星探査は、若い人たちにとって理科的興味を生じさせる大きな材料であり、その興味を広げるのにとても役立つと思います。 また、惑星はそれぞれの特徴を持ち、異なる惑星を見ることで新しいことが分かります。
このように新しい知見を得るこことこそが、学びとなり、教育につながります。文化の育成や向上という点でも貢献できるでしょう。このように、惑星探査は、科学技術の発展だけでなく、人々の好奇心を高め、次の世代の育成にも効果的だと思います。 」

「私も、惑星探査などの宇宙開発プロジェクトを耳にするとわくわくします。
これが『理科的興味』ってことなんでしょうかね。この楽しさは周りの人たちと分かち合いたいですね!。
さて、そんな私たち、つまり若い世代にアドバイスするとした、どんな言葉をかけますか?

「何かに興味を持ち、そして何よりも新しいことにチャレンジする気持ちを持ってほしいと思います。世の中には不思議なことが多くありますが、その見方は人により違います。もしかすると答えは出ているかも知れません。それでも興味を持ち、その人自身にとってオリジナルな疑問をもつことが大事です。
また、展望を持つことが大切です。新発見を得るには、『はやぶさ』のように夢のような途方もないことを思いつく必要があると思います。教科書を一つ一つ学習するのではなく、好奇心を持って、教科書に書いていないような挑戦をしてほしいです。」

「ありがとうございます。真剣に受け止めていきます。
なんにでも好奇心をもって、自発的に挑戦していく。それを私も心に留めていこうと思います!
それでは本当に最後の質問です。先生の今の目標、あるいは夢は何でしょうか?

太陽系航行の航路の確立です。具体的には、太陽と地球のラグランジュ点に深宇宙港を建設したり、ソーラー電力セイルで木星圏を探査するという計画を考えています。この木星圏探査では、『トロヤ群』という、太陽−木星のラグランジュ点に存在する小惑星を測する計画です。この調査では、私達生命の起源や、木星のような巨大ガス惑星の誕生に迫る新発見ができるかもしれません。
「はやぶさ」の帰還が、「はやぶさ」に期待してくださった方々の夢を叶えたとすれば、それは私達にとって最高の喜びです。
『はやぶさ』のような、皆さんに夢を抱いてもらえるような、関心を持たれるような宇宙ミッションを、これからも立ちあげていきたいです。

「これからも、川口さんが宇宙開発において素敵なミッションを達成していくことをお祈りしております!
今日は貴重なお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました!!」


プロフィール

川口淳一郎(かわぐちじゅんいちろう)
JAXAシニアフェロー
宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 教授。工学博士
1983年、東京大学大学院工学系研究科航空学専攻博士課程修了。同年、旧文部省宇宙科学研究所(現JAXA)システム研究系助手に着任し、2000年より同研究所教授。小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャを務める。
専門は探査機の飛行力学、姿勢・軌道制御など

<川口氏の略歴については2013年2月時点でのものです。>
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