大学教授の大相撲取組分析

 はじめに、「ビックデータの正体」から引用です。

 気鋭の経済学者として知られているシカゴ大学のレビット教授は、過去の取組のすべてを洗い出すという新たな角度から、相撲取組の分析を行い、そこですべてのデータを吟味することの重要性を説いています。

 レビット教授は、1989年1月〜2000年4月までの11年分、延べ6万4000番の取り組みデータをもとに異常を探し出しました。相撲には、全15番の取組を8勝7敗で勝ち越さなければ、番付けが下がって収入が落ちるという事情があります。だから同じ一番でも、対戦する力士同士で互いの損得勘定が大幅に異なる取り組みが生まれます。すなわち、千秋楽で7勝7敗の力士が8勝6敗の力士とあたる場合です。崖っぷちの力士にとっては絶対に落とせない一番であるのに対して、8勝6敗の勝ち越し力士には、いわば”消化試合”であるのです。

 白星がそれほど大切なのだから、対戦相手も本気で戦ったはずという指摘もあるでしょう。そうかもしれません。しかし、データの声は違いました。崖っぷちの力士が勝つ可能性がおよそ25%も高くなっていたのでした。この差は、アドレナリンだけでは説明がつきません。データをさらに分析したところ、問題の取組後、再び同じ顔合わせを迎えたとき、1回目に負けた側が勝つ可能性は、3回目、4回目よりも3〜4倍高くなっていることがわかったのでした。

 レビット教授は、安泰力士から崖っぷち力士への「施し」にも思える、と述べています。