倫理とビッグデータ

 2013年7月Suicaの乗降履歴データの販売が波紋をよび、ビッグデータのプライバシー問題が世間に知られることとなりました。

 その、問題となった「日立 交通系ICカード分析情報提供サービス」とは、主に駅エリアを中心にビジネスを展開する企業に向け、毎月定期的に、Suicaのデータを分析することにより得た駅の利用状況のデータを、さまざまな分類でまとめた「駅利用状況分析リポート」を提供するというものでした。

 サービスを利用する企業は、駅エリアの集客力や集客層、潜在商圏の広さ、通勤圏、駅エリアを最寄り駅とする居住者の規模や構成などを把握し、それによって出店計画や立地評価、広告・宣伝計画などへ活用していくことが想定されていました。
 しかし、本サービス発表に対し、ネット上ではプライバシーを懸念する声が寄せられました。名前や住所など個人を特定する情報は匿名化されているので、個人情報保護法に抵触する可能性は低いけれども、事前に利用者への説明がなかったため、問題視する声が出たものとみられています。

 このように、ビッグデータのプライバシーに関する規制や制度が日本にはまだないので、ビッグデータを使用するときには細心の注意を払う必要があるのです。



<ここから更新>

 政府は2013年12月20日午前のIT総合戦略本部で、ビッグデータの活用に向け、そのための法を整備することを決めました。

 それは、匿名化した個人情報であるなら本人の同意がなくても第三者に提供できるようにするというものでした。またプライバシー保護の観点から情報を扱う事業者が負う義務も法律で定めることとなったのです。

 これらの法律は、まさに上に書いてあるICカードの個人情報のようなトラブルが今後増えていくように思われ、その対策として作られたのでしょう。

 現行法では、本人の同意を得ていない個人データの第三者への提供を原則禁止していますが、匿名の個人データの取り扱いについては具体的な定めがなく、上のICカードのビジネスなどでの活用を促すには消費者の懸念に応えるルール作りが急がれているのです。