工学とビッグデータ
故障しない機械はこの世にはありません。そして大抵は突然故障してしまいます。そこで機械にセンサーを取り付けて、
センサーから得られるビッグデータを基に機械の故障予兆を掴むことができれば、故障が発生する前に手を打って被害を最小化することもできるのです。
こうした機械の故障予測は、これまで主に学術的な研究対象とされてきましたが、最近は
センサーやデータ分析環境が安価に利用できるようになったりビックデータの考え方が広まったりしたこともあり、ようやく実用で使えるところまで来ました。以下では、商用サービスや製品のレベルにまで故障予測技術の成熟度を高めた事例を紹介します。
機器類の故障として身近なのは、プリンタ複合機の故障でしょう。印刷物ができるまで一刻を争うときに肝心のプリンタ複合機が不調で苛々する、という経験を持っている方も多いはずはずです。企業の中には、プリンタ複合機に付帯するメンテナンスサービスの一環として、その設置環境(温度・湿度)や用紙(サイズ・紙質)、メンテナンス内容(保守エンジニアが実施した消耗品交換・トラブル処置)等、顧客が日常使用する際に得られる一連のデータを、ネットワークを通じてデータベースに蓄積しているところもあります。
こうして蓄積された膨大なデータは宝の山であり、これらを
データをマイニング技術(データマイニング)で分析すると、ある共通する傾向を読み取ることができます。たとえば、「頻繁に印刷の途中で用紙が排紙されてしまうようになったら〇週以内に故障する可能性が高い」「周期的な汚れが目立つようになったら感光ドラムが摩耗している可能性が高い」等、消耗品の推定寿命やトラブルの予兆パターン等のルールを見つけることができるのです。こうしたルールを数多く用意することで、適切なタイミングでの消耗品の補充やトラブルの予防、あるいはトラブル発生時のスピーディな原因解明と対処等のメンテナンス業務が適切に行われ、高い顧客満足度を生んでいるのです。
このように、
「定期的」ではなく「定常的」に機械の運転状態を監視し、
故障発生の予兆を検知して対策を打つ「予知保全」と呼ばれるもので、このようなビッグデータを活かしたメンテナンスサービスの品質向上は、競合他社に対する差別化ポイントとして今後はさらに重要視されていくでしょう。