rogo japanese english

t

このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

Adobe Flash Player を取得



世界が注目するスペースデブリの研究

この章ではスペースデブリ問題を解決すべく立ち上がった企業・機関・大学を取り上げ、詳しく説明しています。

左側のナビゲージョンバーをクリックすることにより見たいページまでスライドできます。

みなさんもここまで読んでお分かりのように、スペースデブリはどんどん増え続け、非常に危険な状態です。

しかし、そんな状況に対し、実は明確な解決策はありません。なぜでしょうか。
その理由は、このスペースデブリに対し、宇宙関連費用の約0.2%、またはそれ以下の費用しか使われていないからなのです!

g2

このグラフを見てわかるように、ロシア、アメリカ、中国の3カ国で宇宙物体の9割以上を占めています。

しかし、この3カ国は「私達はすでに世界に十分貢献しているのだから、恩恵を受けている人達が費用を持つべきだ。」「と考えているようです。
それに対し、他の国は「私達は手を汚していないのだから、3カ国が払えばいいじゃないか。」と考えています。これでは埒が明きません。

だからこそ、スペースデブリの問題は滞ったままなのです。
しかし!そんな中でも「このままじゃだめだ!」と対策を乗り出したところがあります。



研究されていること

日本を始め、世界中の国々がスペースデブリ問題について研究しています。
企業や大学などで行われている研究を見ていくことで、
私たちの意見を作っていきましょう。




除去

現在までの宇宙開発でたくさんのスペースデブリが発生してしまったことは皆さんにわかっていただけたと思います。

もし人類が宇宙開発をやめても、デブリは減るどころかケスラーシンドロームにより増加すると考えられています。

根本的なデブリ問題解決にはデブリを除去していくことが必要です。
除去の研究としては、


  •ASTROSCARE社のBOY
  •JAXAの導電性テザー
   などがあげられます。


観測

宇宙ではスペースデブリがたくさん漂っています。
しかし、これらを放置すると稼働中の人工衛星やISSなどに被害を与える危険性があります。

アメリカのNASAを始め各国は、自国の人工衛星やスペースデブリをカタログ化したりどこの位置にいるのかを観測し、デブリとの衝突が避けられるようにしています。また、デブリ環境のシュミレーションなども行っています。
日本では、

  •岡山県の美星スペースガードセンター
  •九州大学とJAXAが提携して行っているデブリ推移モデル

  などがあげられます。

防御

10cm以下の物体(微小デブリ)は小さすぎて地上からの観測施設では観測することができません。

微小デブリが人工衛星などに衝突する確率は非常に高いため、人工衛星などは外壁を防御する仕組みを持っています。

しかし、ただ守るだけでもスポーリングなど様々な問題が潜んでいます。どのような対策をしていくべきなのでしょうか。詳しくは下をご覧ください。


  •ISSでの防御の仕組み
  •スポーリングの仕組み

発生防止

スペースデブリの問題が発覚して以来、これからは「スペースデブリを増やさない」という努力が各国の宇宙開発機関で行われています。

デブリを作らず人工衛星などを持ち帰ることは不可能に近いですが、リサイクルしたり、ブレークアップを防ぐことで微小デブリの発生を防止することはできます。

人工衛星の打ち上げでは、
① ある程度まで高度をあげ、個体ロケットブースター(補助ロケットともいう)を分離する

② さらに高度になると大気が稀薄になり、衛星のフェアリング(ロケットを保護する膜のような物)が必要なくなるのでこれを分離する

③ 第一段目のロケットを分離する

④ 第二段目のロケットを分離する

⑤ その後所定の軌道(静止軌道など)に投入する

という、大まかに5つほどの段階があります。

この中で「分離される」ブースターなどの部品について、パラシュートを使用し損害を最小限に抑えて回収し、リサイクルすることで、デブリを発生させないだけではなく、莫大な費用がかかる宇宙開発のコストを削減することができます。

しかし、回収されないブースターも多く、そういった物はスペースデブリとなってしまいます。

かつては宇宙に残されたブースター(推進系)の燃料が爆発してしまう事故も多数起きていました。
推進剤の排出対策を行っていない機体は大変危険なので、早急に解決していくことが必要です。




企業での研究

Astroscale

ASTROSCALE社って?

アストロスケール社は、シンガポールを拠点する宇宙事業会社です。

現状のスペースデブリ問題を打破するために従来の国主導のやり方ではダメだと感じた日本人起業家の岡田光信さんが、
2013年5月4日、シンガポールでスペースデブリ除去を事業目的としたアストロスケール社を設立しました。

kjfhd

岡田光信(ASTROSCALE社提供)


アストロスケール社は、宇宙の持続的開発利用を目的とし、スペースデブリ除去システム(ADR)の研究開発を通じ、宇宙環境問題の認知向上を図っており、
同社の業績は創業当初から黒字が続いています。

同社では、民間企業が宇宙開発に携わるためのパイプラインとなり、宇宙をもっと身近な場所へと変えることを使命として掲げています。



アストロスケール社の戦略

アストロスケール社は、まず、2万個のスペースデブリの中でも、比較的大きな物にターゲットを絞りました。

岡田光信さんは、打ち上げた衛星から『マザーシップ』と呼ばれる衛星をスペースデブリに接近させ、その後『BOY』という子機を発射して目標物に接着するというアイデアを考えました。

接着した『BOY』は、スペースデブリを押して大気圏に突入させ、最後は空気との摩擦による摩擦熱で、スペースデブリもろとも焼却されます。抱きつき心中みたいですね。

初打ち上げは2018年を想定しています。

このプロジェクトに参加するメンバーは非公表ですが、今のところ日本を含め、4大学、2企業によるグローバル体制をとっているようです。


boy

これが『BOY』です。
『BOY』は、自分より大きなスペースデブリにくっついて、大気圏まで連れていき、そこでスペースデブリを燃やすことができます。
では、どのようにして連れていくのでしょうか?  


boy2

boy3


全てのスペースデブリは地球周辺を回っています。
この性質を利用するのです。
スペースデブリと一緒にくっついた『BOY』も地球周辺を回り、減速させるためにスペースデブリを強く押します。

そして、軌道の形を変えて大気圏に突入させ、燃やします。100年以上軌道を回っていたスペースデブリも、たったの2日間で大気圏につれてくることができます。


mother

これがマザーシップです。マザーシップには6機の『BOY』が入っています。マザーシップが1機ずつ『BOY』を解き放ち、『BOY』たちが大気圏へスペースデブリを連れてくるのです。

私たちの意見

皆さんも「企業」の欄を見ておわかりになったと思いますが、スペースデブリ除去を主な活動内容にしている企業は本当に少ないのです。

私達が調べた限りではアストロスケール社1社しかありませんでした。
他にもスペースデブリの除去に民間企業が関わっていることもありますが、それはあくまで「提携」としてであり、スペースデブリの除去に焦点を当てて活動しているわけではないのです。

つまり、JAXAやNASAなどの宇宙機関が「次、スペースデブリを除去するために、こんな感じでやろうと思っているから、この機械や道具を作ってほしい。」と三菱重工などの民間企業に頼むのです。

依頼された民間企業は、確かにスペースデブリの除去には関わってはおりますが、焦点をあてているわけではありません。

アストロスケール社はそんなスペースデブリ除去に焦点を当てて活動している、数少ない企業です。
アストロスケール社の代表者である岡田光信さんは、宇宙について専門に勉強していたわけではなく、もともとは農学部の出身です。
しかし、そんな人が様々な会社での経験を活かして突然宇宙産業に乗り出し、創業以来黒字が続いています。

今や宇宙は、世界の様々な起業家たちが、インターネットに続く新たな巨大市場になるかもしれないと注目しています。

その中でも、これから必ず問題になってくるであろうスペースデブリの除去は、経済の面でも宇宙産業最大のビジネスチャンスとなる重要な場なのかもしれません。



大学での研究

九州大学

九州大学の花田 俊也先生らとJAXAは共同で宇宙からスペースデブリを減らすために、
また宇宙にある人工建築物をデブリから守るために様々な研究を行っています。

・デブリ推移モデル

デブリ推移モデルとは、デブリ環境が今後どうなっていくかを予想し、どのような対策を行えば効果的に将来のデブリを減らすことができるのかを評価するものです。
今後デブリを減らす国際的なルールを十分守ったとしても、すでに軌道上にあるデブリ同士の衝突により数が増加してしまうことが予測されています。
このようなデブリの自己増殖は、各国の推移モデルで確認され、どうしたらよいかが国際的に議論されています。

推移モデルにより、どのようなデブリ対策を行えば効果的に将来のデブリを減らすことができるかを評価することもできます。

・デブリ衝突損傷リスク解析ツール

この解析ツールは、人口衛星などの形状や姿勢、どの部位にどれほどのデブリが衝突し、
損傷を与える可能性があるかを解析するものです。
デブリが衝突した場合重大な影響を受ける可能性のある機器を何らかの手段で防御する、
または衝突確率の低い位置に重要な機器を搭載するなどの対策をするきっかけとなります。

・デブリ発生防止標準支援ツール

デブリの発生を減らすために、JAXAはデブリ発生防止標準を設定しています。
その基準を満たしているかどうか評価するためのツールです。
人口衛星などの軌道上寿命や発生防止基準に適合するためにはどれくらいの燃料が必要かを計算したり、
大気圏で燃え尽きずに地上に落ちてくる可能性を簡易的に評価することができます。


東北大学


JAXAは国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」から超小型衛星を放出するミッションに、5 機の衛星を選定し、その衛星の一つとして、東北大学と産業機械製造メーカーの中島田鉄工所が共同開発する超小型人工衛星 「FREEDOM」が選定されました。

FREEDOMは一辺の長さが約 10cm の立方体で、質量が約 1.3kg の超小型人工衛星です。
「FREEDOM」は「きぼう」から放出後、軌道上において 1~1.5m 四方の薄膜を展開し、宇宙空間にわずかに存在する空気抵抗を利用して軌道を離脱、地球大気圏への早期再突入する実証試験を試みます。

FREEDOM に搭載される膜展開式軌道離脱装置は、近年世界中で盛んに開発が進められている超小型人工衛星が運用終了後に軌道上でスペースデブリ化することを防止するために、 国連のスペースデブリ低減ガイドラインを基に東北大学と中島田鉄工所が中心となって共同開発した装置です。
つまり、このFREEDOMは運営が終わったら自分で大気圏に突入し、デブリにならないという新たな人工衛星なのです。


スイス宇宙センター

スイス宇宙センターって?

スイス宇宙センターは、2003年、宇宙研究の重要な拠点として、スイス西部にあるローザンヌ連邦工科大学に設立されました。
現在は宇宙分野における共同開発を行っています。
そのパートナーとして、スイス初の宇宙飛行士として宇宙を旅し、
現在、ローザンヌ連邦工科大学の宇宙科学科で教授をしている、クロード・ニコリエ氏などがいます。
スイス宇宙センターは、宇宙へのさらなる関心の向上と、宇宙研究開発プロジェクトを促進することを目標として掲げています。



汚した者が片付ける

2009年、スイス宇宙センターはスイス初の人工衛星、『スイスキューブ』を打ち上げました。
しかし、大気光の観測という任務を終えたスイスキューブがそのまま軌道を回り続けないよう
回収するために、スイス宇宙センターは『クリーンスペース・ワン』プロジェクトを計画しています。
『クリーンスペース・ワン』プロジェクトの広報責任者である、フォルカー・ガス教授は、「汚した張本人に掃除する義務がある」と言っています。
スイス宇宙センターは『汚した者が片付ける』という原則にしたがってこのプロジェクトを進めているのです。



クリーンスペース・ワン

スイス宇宙センターが進める『クリーンスペース・ワン』は、2016年か2017年に実用化される予定です。
サイズは30×10×10cmというスケールの超小型衛星、予算は約14万スイスフラン、日本円だと約8億円を予定しています。

スイスに拠点を置き、小型人工衛星打ち上げシステムを開発するベンチャー企業、
スイス・スペース・システムズは、2013年9月10日に、この開発費として約16億円を投資すると発表しました。
これで予算の問題は大丈夫ですね。  


『クリーンスペース・ワン』は標的となる『スイスキューブ』をつかむために、アームをとりつけて地表から発射し、回収後は大気圏に突入する際に、スピードと、
空気による圧縮熱で燃え尽きるような計画となっています。考え方としては、『アストロスケール社』に似ていますね。しかし、この計画には難しい課題が含まれています。

一つは、時速2万8千kmで動く『スイスキューブ』を明確に認知し、捕まえなければならないということです。

そしてもう一つは、正確に操縦するために、極めてコンパクトな電動モーターの開発が必要だということです。
このようにして見てみると、目標物を捕まえなければならない、スイス宇宙センターの『クリーンスペース・ワン』よりも、
目標物にくっつくだけでいい、アストロスケール社の『BOY』の方が簡単そうに見えますね。しかし、つかまえる目標物の大きさが違います。
『BOY』が捕まえるのは、比較的大きなスペースデブリですが、『クリーンスペース・ワン』が捕まえるのは、10×10cmの超小型な『スイスキューブ』です。
たしかに10×10cmのものにくっつくのは無理がありますね。

こんな難しい課題を抱えた『クリーンスペース・ワン』ですが、フォルカー・ガス教授は「エンジン工学、ロボット工学、精密機械技術、光学小型化の技術はスイスの得意分野である。絶対に成功する!」と自信を見せています。頼もしいですね。
もし、この難しい課題が解決し、実用化されたら、『スイスキューブ』だけでなく、他のスペースデブリも回収することができるかもしれません。
事実、開発者は「『クリーンスペース・ワン』はたった一回の活動にとどまるのではなく、宇宙圏の保護のための数ある任務のうちの最初の一歩である。」と言っています。

  2018年に打ち上げを想定している、大きい目標物を捕まえる、アストロスケール社の『BOY』。
そして、2016、2017年に実用化を予定する、超小型な目標物を捕まえる、スイス宇宙センターの『クリーンスペース・ワン』。もしこの二つが、予定通りに、ともに実用化に成功したら、スペースデブリの数は格段に少なくなっていくでしょう。楽しみですね!



JAXAでの研究

導電性テザー

JAXAの考える対策って何??

 私たちはJAXAに
『現在JAXAで検討されているスペースデブリ除去システムで最も低コストであると思われる方法はどのようなものですか?』
という質問をしました。

そこでかえってきたお返事は、導電性テザー(電気を通すヒモのこと)を用いたスペースデブリ除去システムの研究開発というものでした。
「網でスペースデブリを捕まえる!」とも表現されるこの技術、いったいどのような仕組みなのでしょうか?


純日本製!?導電性テザ―

JAXAでは、この導電性テザーを使って次のようにスペースデブリを除去しようとしています。
「宇宙ゴミ除去機」をロケットで打ち上げる
         ↓
「宇宙ゴミ除去機」を軌道投入
         ↓
「宇宙ゴミ除去機」を除去するデブリに接近させる
         ↓
「宇宙ゴミ除去機」が宇宙ゴミに「テザー」を取り付ける
         ↓
「宇宙ゴミ」はテザーを取り付けられたことで軌道を下げる
         ↓
「宇宙ゴミ除去機」は次の宇宙ゴミへ移動

導電性テザーは、その名の通り電気を通すようにできています。導電性テザーを宇宙ゴミに取り付けて電流を流し、地球磁場との干渉によって発生するローレンツ力(電気をもつ粒子が受ける力)により軌道を下げていくそうです。

このテザーの開発を行ったのが漁業用の網制作の大手メーカーの日東製網です。
日東製網は「電気を通す、アルミワイヤ12本+ステンレスワイヤ6本を網状にし、簡単に切断されないような構成としている網」を制作しました。
一本の細い網にしてしまうと1mm以下の小さなスペースデブリがかすっただけでも切れてしまうので、簡単に切断されないように網状の構造をしています。

導電性テザーの仕組みって??

 では、この便利なテザーはどのようにデブリを減らすのでしょうか。
簡単に解説したいと思います。


t

私たちの意見

JAXAで(つまり世界で)最ホットなデブリ除去装置を見てきました。導電性テザーの研究は各国で行われていますが、日本の企業が協力して作っていると考えるととても誇らしく感じます。
(問題)
現在存在するデブリを減らすというのは果てしない作業であり、「仕方ないから見て見ぬフリをしよう」というのが国際社会の傾向です。
そんな中でも未来のために根本的な解決方法を研究する機関・企業は本当にすばらしいと思います。
私たちはそのような現状をもっと知り、興味関心を持つ必要があると思います。



世界でのデブリ対策

ISSでの対策

国際宇宙ステーションとスペースデブリ

ass

国際宇宙ステーション(NASA提供)


1980年代後半から、スペースデブリは宇宙ステーションにとって大きな脅威となることが分かりました
。そのため、皮肉なことではありますが、この頃からスペースデブリの研究が急速に進むようになりました。
国際宇宙ステーションで、スペースデブリの被害をこれまでになく受けることが容易に想像できます。
さらに、宇宙ステーションは人が宇宙で活動する場でもあります。このため、スペースデブリの問題は絶対になんとかしなければならないことなのです


国際宇宙ステーションを守るために

国際宇宙ステーション(ISS)では、スペースデブリの衝突からISS自身や活動している宇宙飛行士たちを守るために、外壁を強化する対策がとられています。それがホイップルバンパーです。

ホイップルバンパーは天文学者のフレッド・ホイップルが考案したものです。
壁の外側にもう一層の薄い金属板をもうけ、スペースデブリが外側の板に衝突した瞬間に、スペースデブリの運動エネルギーが熱にかわるようになっています。
  あたった部分の板は、熱のせいで溶け、穴があいてしまいますが、同時にスペースデブリは気化してしまうか、または機体と液体と固体の混ざった細かな破片に変わって威力を失い、壁にはほとんど影響を与えなくなります。

ホイップルバンパーの構造は下のようになっています

          
アルミニウムの合金でつくられた外壁(与圧壁)の外側に、約110mm~120mmの間隔を空けてアルミニウムのバンパーがあります。
これにより、衝突したスペースデブリは粉砕し、バンパーの後ろの空間で拡散させて与圧壁へのダメージを軽減することができます。
また、与圧壁とバンパーの間に多層の断熱材を重ねることで、発生した熱をやわらげています。

日本の実験練である『きぼう』の進行方向側150度の範囲には、スタッフィングホイップルバンパーが使われています。
構造は次のようになっています。


ホイップルバンパーの与圧壁とバンパーの間に、多層のアルミメッシュやセラミックなどの強化材を組み込むことで防御性能を向上させました。これにより、約1cm以下のスペースデブリは防御することができます。

実際に『バンパ高速衝突試験』という実験を行い、『きぼう』が要求されている防御性能を持っていることが確認されました。
この実験は、直径5mm、7mm、9mm、11mmの4種類の模擬スペースデブリ(アルミ球)を秒速2,5km~6,0kmで、『きぼう』の壁に使用されている材質に衝突させたものです。
貫通限界曲線を検証するために、直径と速度の色々な組み合わせによって試験が行われました。

貫通限界曲線とは、どの位の大きさのスペースデブリがどの位の速度で衝突したときに壁に穴があくのかを理論的に計算してグラフにしたものです。
貫通限界曲線が理論上だけでなく、実際の試験結果とも一致することをこの試験で確かめて、『きぼう』が要求されている防御性能を確認します。
しかし、試験装置で作り出せる速度は限界がありますので、装置の能力以上の速度で衝突した場合に穴があくのかは、貫通限界曲線から予測するしかありません。
この結果、『きぼう』が衝撃に耐えることができることが実証されたのです。

また、10cm以上のスペースデブリについては地上からの観測ができるので、軌道を予想してさけることができます。

しかし、大きさ約1cm~10cmのスペースデブリが問題となります。
地上での観測が困難なうえに、現在のシールドではスペースデブリの衝突から国際宇宙ステーションを保護できない可能性があります。
さらに、将来は、シールドの性能向上に加えて、打ち上げの際の輸送経費削減のために、軽量化が課題となっています。

Gossamer

欧州宇宙機関(ESA)は、2013年12月20日、超小型衛星「クモの巣」衛星についての最新の情報を公開しました。

この「クモの巣」衛星の正式名称は「ゴッサマー・デオービット・セイル(Gossamer Deorbit Sail)」、ゴッサマー(クモの巣)と呼ばれています。
 
              c
 
       

ゴッサマーの大きさは15×15×25cm、重量は2kgと非常にコンパクトで、数分で5×5mの帆を広げることができます。
このゴッサマーを機能停止した衛星に取り付けることで、大気による空気抵抗や空気抵抗により、衛星の周回速度を低下させて大気圏に再突入し、ともに燃え尽きることができます。とても軽いカーボンファイバー製のブーム(支柱)にわずか数㎜程度の厚さのアルミニウムで処理されたカプトンフィルムでできたセイル帆が取り付けられています。
人の髪の毛の直径の太さと同じくらいの厚さしかありません。
非常に軽量ですが、約700kgまでの衛星を大気圏内に落とすことが可能です。


ゴッサマーはESAの電気通信システムズ(TCS)先端的研究プロジェクトの資金のもと、サリー大学の宇宙センターで開発されていて、既に軌道上の一連の実証実験を終えています。
衛星電話や低速データ通信を提供する通信衛星が位置する高度700km程度の地球低軌道で利用することを予定しています。

ESAが2008年にスペースデブリ対策として提案したヨーロッパでの行動規範では、人工衛星が運用を終えて25年以内に軌道から離脱し、他の衛星との衝突事故が起こらないように努力する必要があると決められました。

高度750kmで周回する衛星は、何も対策をしなければ、1・2世紀もの間、高速で漂い続けるのですが、このゴッサマーを取り付ければ、光圧や大気の抗力を利用することで25年程度で高度を下げ、大気圏に再突入させることができます。

2014年には実証衛星が打ち上げられて、数週間にわたってセイル推進の検証を行われた。
その後、大気の抵抗を十分受けられるようにセイルの向きを調整し、軌道をそらす実験をします。
高度600kmでは非常に大気は薄いのですが、十分な抵抗を受けるので、2~12ヶ月以内に落下して燃えつけることが可能だといいます。


サリー大学のラバス・バイオス教授は

「私たちはこのESAの『クモの巣』衛星のデザイン、製造および試験を世界で一番始めに実証することができ、大変うれしく思います。
このプロジェクトは、低コストで寿命を終えた衛星を軌道から離脱させるシステムのデザインが可能であると示しただけでなく、有形の製品として商品利用に結びつけることができるでしょう。」
と言っています。


推進系での対策

ロケットの推進系や電気回路からデブリが発生しないよう工夫することは、デブリ対策として最も初歩的なことであると言えるでしょう。

推進系の爆発で起こる事故や起きてしまう仕組みについてはこちらをごらんください。 →推進系

現在打ち上げられたあとのロケットの推進系で行われるデブリ発生防止対策は燃料を全て宇宙空間に放出する方法が一般的となっています。
しかし、これでは宇宙空間をさらに汚してしまいますよね。

また、ロケットは進むときに燃料を燃やしますが、その燃えかすがデブリとなってしまう、
という問題が近年浮かび上がってきました。

この問題を解決するために、現在、デブリ低減固体推進薬という、燃えかすをデブリにしない新たな燃料の開発が始まっています。

推進系では様々な問題が発生している事実をおわかりいただけたでしょうか。
これを解決するには、もっと多くの人がこの便利な生活が成り立つのは人工衛星のお陰であり、
その人工衛星からはたくさんのデブリが発生してしまっているという事実を知るべきです。
報道機関等がデブリについてもっと多く取り上げれば世論は動き、開発のための予算が増え、研究は早く進み、将来完全に「デブリが出ない」燃料が開発されるかもしれません!!
ロケットの燃料は時代が経つにつれて様々な変化をしていきました。


日本や世界の高い技術力で、より安価でよりデブリが発生しないような燃料の開発が進んでいくとより良いですね!



大学・企業に質問!

山崎直子さんに質問!

元宇宙飛行士の山崎直子さんにスペースデブリについての意見を伺うことができました。

質問:デブリと遭遇したことはありますか?

山崎さん:スペースデブリは速すぎて肉眼で見ることは出来ませんでした。
     でも、スペースシャトルの外壁を見ると、20箇所ほどの傷がありました。

質問:地上からスペースデブリを避けるための警告はありましたか?

山崎さん:私がいた時は無かったんだけれども、今年宇宙ステーション(ISS)は2回は宇宙ゴミが近づいているから、避けなさいという指令は出ています。
同僚の古川さんが滞在していた時だと、宇宙ごみが300mくらいまで近づいたんです。結構近いですね。ぶつかったら大変だということで、ソユーズ宇宙船(救命ボート)に皆が待機して、地球へ戻る準備までしていたということもあります。

質問:すごいですね、そんな危機が……。

山崎さん:これからますます大変だから、今国連でも中心となってガイドラインを作って、これから打ち上げるものに関してはゴミにならないようにしましょうということになっています。強制力はまだ無いし、今あるゴミに関してはお掃除する手段を皆さん研究中ということで……。
日本スペースデブリで結構先がけだと思うし、力を入れているから、日本が逆にリードとってその問題を解決していく、リーダーシップとれる分野だと思うので是非皆さんには頑張って欲しいなと思います。

    (一同頷き)


質問:スペースデブリ低減ガイドラインの強制力の無さについて、

山崎さん:教育ってすごく大切だと思います。いわゆる宇宙大国といわれるところはだいぶ宇宙ゴミを減らそうという動きになっています。
というのも、宇宙ゴミが増えすぎると人工衛星を飛ばせなくなるので危機感があるんですね。人工衛星自体は世界的に、特に地球観測などの分野では年に10%ぐらいの需要が伸びている段階で、アジア、アフリカといった新しい国がどんどん増えている中で、そういった思想が浸透していません。
だから、やっぱり世界的な教育って大切なんだろうなと思います。ワークショップを国連中心に開いたりだとか、啓蒙活動をするといった地道な動きが必要だし、同時に技術的に解決する両方の対策が必要だと思っています。

質問:まずはスペースデブリを知ってもらうということですか?

山崎さん:そうですね。
特に中国とかは人口と実験の回数が圧倒的に増えてしまうので、避けないといけないし。やはり、宇宙ゴミが増えてくると、今ある人工衛星にも危害が加わって、私達も宇宙に出られなくなる。
そういった脅威があるんですよ、ということ自体がまだ広まってないので、ウェブサイトを作るような発信って大切だなと思います。

    
質問:宇宙国際連盟といったような組織を作って、加盟国には新しい法律(強い拘束力)に従ってもらうという案もあるのですが……

山崎さん:そうなんですよ。今、国連が中心となったガイドラインもそうなんですけど、逆に緩い形だとたくさんの国が署名しやすく、月条約といった強制力を持った形にすると、ほとんどの国が参加しないと。ジレンマなんですね。

質問:どこまで上げるのかみたいな……

山崎さん:そうですね。参加しやすい枠組みえを作るということが、宇宙開発に限らず色々な分野で共通することで、大切だと思います。

質問:宇宙の開発をすすめるよりも、地球上の問題解決を優先するべきという考えもありますよね?

山崎さん:そうですね、私達もいつもこの質問が出た時にどう答えようかなぁと思ってしまうんです(笑)
これという答えはありませんが、私が思うのは、宇宙開発というのは宇宙に行くためだけではなく、むしろ地球の問題を解決するために宇宙開発が必要なんだと思っています。
宇宙に行くことで、宇宙からみた地球という概念、規模で、エネルギーや気候の問題を解決していこうという取り組みにつながっていきますし、地球上だけではなく宇宙という場を使って、例えば月の資源を使ったりなどして、もっと視野を広げて考えることで、また違った解決方法が見つかるのではないか、地球の問題を解決するためには違う視点が必要なのではないかということを私は凄く思っています。
人工衛星の中で、地球の防災や気象予報に役立つものやGPS、放送通信衛星は今はなくてはならないものとなっていますが、それを一歩進め、私達が抱えている課題に対して人工衛星などをどう使っていけるかということが、たしかにまだまだ具体的にはつかめていません。
なんとなく、「宇宙という切り口も大切なんだろうな」というのはありますが、ではどう役に立つのかと具体的に聞かれた時に、やはり、まだその点については、たしかにきちんと考えていかなければならないと思います。

なので、逆に、皆さんの活動の中でいろいろ提言していただけると私達もすごく参考になります。

山崎さん:そういった発表の場などもきっとあるだろうし、私にも言っていいただければそういった場を作るお手伝いなどもできると思います。

なので、皆さんがもっと発信するということをやっていただける私達もとても助かります。
質問:それが山崎さんのいう「経済学者や芸術家など、文系の人たちも宇宙にいく価値がある」というところにつながってくるのでしょうか?

山崎さん:はい。

理科系の分野だけではなく、色々な分野の人と接点を持たなくてはならないと思います。

   

や

貴重な時間を割いていただき、本当にありがとうございました。




JAXAに聞いてみました!


JAXAでは未踏技術研究センターで、スペースデブリの対策が研究されています。

質問1)
現在JAXAで検討されているスペースデブリ除去システムで 最も低コストであると思われる方法はどのようなものですか?

回答1)
現在、JAXAでは、導電性テザー(電気を通すヒモのことです)を用いたスペースデブリ除去システムを研究開発しています。
この方式は現在、米国やヨーロッパ等でも研究開発されていますが、 最も低コストでデブリを除去できるものと考えています。



質問2)
現在JAXAで検討されているスペースデブリ除去システムで 最も短時間で多くのデブリ(質量)を回収できる方法はどのようなものですか?

回答2)
デブリ除去は1回に1基のデブリ除去衛星を打ち上げることになると考えられます。そのため、短時間に多くのデブリ除去衛星を打ち上げれば多くのデブリが回収できることにはなります(デブリ除去衛星は1基で複数のデブリを除去することを検討しています)。

デブリの危険性を回避するためには、衝突確率の大きい太陽同期軌道や高度1000km、軌道傾斜角83度など混雑した軌道から100個程度の大型デブリ(ロケット上段や使命を終えた人工衛星等)を除去できれば宇宙全体としての危険度を大きく下げることができます。

そのため、JAXAでは、大型デブリの除去を目的としたデブリ除去システムの研究開発を進めています。混雑軌道にある大型デブリを毎年5個から10個除去し続けると、デブリの数を現在のレベルに維持できると予測されています。

なお、導電性テザーによるデブリ除去は、テザー取付後、時間をかけて、デブリを落下させるため、時間がかかるという意味でしたら、従来型スラスタ(ロケット)を使って除去する方法が時間的には早いかとは思います。



質問3,4)
ロボットアームによるデブリ除去システムの現在の問題点はなんですか?
また、ロボットアーム自体は使用後どのように処理されるのですか?

回答3,4)
ロケット上段がデブリの場合、ペイロード取付部が位置的・ 強度的に捕獲に適していると考えましたが、周辺に様々な機器がついているので、それらをよけてつかむ必要があり、精確な位置・姿勢の計測や、動きに追従してロボットアームを制御する必要があり簡単ではありません。

また重量やコストが大きいという点もロボットアームの課題です。 そのため現在は、ロケット上段の場合、パフ(ペイロード取付部)の開口部の中に伸展ブームをひっかける方式を検討しています。

伸展ブームには 導電性テザーが取り付けられ、デブリと一緒に落下させます。 JAXAでは、ロボットアームで捕獲する研究も行っています。


貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました。

立命館大学衝突学研究室に質問!

立命館大学 理工学部機械工学科 衝突工学研究室 渡辺桂子博士に
お話を伺いました。

質問)
デブリがぶつかっても大丈夫な防護壁を作るにはどうすればいいのでしょうか?

回答)
ただ頑丈に作るだけでは安全とは言えず、デブリのエネルギーを吸収・変換し、運動エネルギー以外の物に変える必要があります。


立命館大学では高速で物質をぶつけた時の実験をする施設や、エネルギーを上手く吸収する発泡アルミなどを見学させてもらいました。


ss2h


貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました。


横浜国立大学に質問!

横浜国立大学 大学院 工学部生産工学科の篠塚 淳准教授は衝突学について詳しい先生です。
スペースデブリの衝突のシミュレーションも行ったことが篠塚先生にスペースデブリついて質問をさせていただきました。




質問1:
スペースデブリの危険性ってなんでしょうか。


回答:
スペースデブリの危険性はひとつではありません。
まず、皆さんが勘違いしているかもしれませんが、デブリが衝突したとき最も重要になるのは衝突したデブリの質量ではなく密度であることです。
宇宙の人工物はほとんどが合金などの金属ですよね。だから被害は莫大なものになります。

また、ISSやロケットは微小なデブリに対しては衝突から身を守るような構造をとっていますが、そこにも問題があるんです。
外壁はデブリがぶつかっても傷がつくだけなんですが、そこからくる振動によって中の構造に影響が出ることがあります。物がぶつかった振動が部屋の壁に跳ね返り、天井が落ちてしまうということを想像するとわかりやすいかもしれませんね。
これをスポーリングといいます。
スポーリングに対しても対策をする必要がありますが、あまり知られていないのが現状です。



質問2:
現在考えられているデブリ除去システムとしてロボットアームがありますが、実現可能なのでしょうか?


回答:
そうですね…。
無重力空間でアームをのばそうとするとロボット自体がくるくる回りそうですけどどうなんでしょうか。
でも将来そういうロボットが生まれるといいですね。

く


これは篠塚先生自作の空気銃型の高速切削試験機です。

現在はあまり使っていないそうですが、専用のペレットを使用し衝突の実験をするそうです。
貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました。