スペースデブリをもっと知ろう!
この章では、スペースデブリとは何なのか?どうやってできるのか?どのような影響があるのか?など、デブリについての基本的な情報を詳しく紹介していきます。
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最初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられてから、約50年が経過しました。
スプートニク1号(wikimediacommons)
人類は歩みを止めず、今や通信衛星などは日常生活に欠かせないものとなりました。
2014年3月9日には、日本の宇宙飛行士、若田光一さんが日本人初となる船長(コマンダー)に就任し、同じ年の5月14日、無事に地球に帰還しました。
「宇宙は無限である」とよく言いますが、宇宙へ人類が出発する出発口は、当たり前ですが地球であり、地球を取り巻く空間は有限です。
もし、その有限の玄関が、何らかの形で閉じられてしまったら、人類の「宇宙」という『夢』への旅立ちはできなくなってしまいます。
しかし、そんなことを人類が想像するはずがありません。皆さんもそんなこと考えたことありませんでしたよね。しかし今、その問題が現実のものとなりつつあります。
スペースデブリってなに?
デブリとは?
「エンデバーこちらミッションコントロール、衝突回避のため5分間はカウントダウンの再開ができません」
これは、若田光一さんが乗り込んだスペースシャトル、STS 72(エンデバー号)の打ち上げのときに
実際に発生したことです。
若田光一(wikimediacommons)
打ち上げを見守っていた人たちの表情は不安に曇りました。
幸い、5分間のホールドの後、カウントダウンは無事に再開され、打ち上げられました。
この原因となったのが、宇宙に漂うゴミ、『スペースデブリ』です。
『スペースデブリ』、正式名書は『space debris』。略されて『デブリ』と呼ばれることもあります。
『デブリ』とはフランス語で『破片』という意味を表します。『スペースデブリ』は、そのままの意味、『宇宙のゴミ』を表します。
宇宙での衝突は、地上でおこる自動車事故などに比べて桁違いにスピードが大きいです。
例えば、ソフトボールほどの大きさのものでも、衝突すれば大惨事となります。
もし、スペースデブリが人工衛星や宇宙ステーションなどの有人施設と衝突すれば、これは大変なことです。スペースデブリの速度は秒速8km、高速事故でおこる事故の場合よりも400倍も大きいです。
もっと言えば、ライフル弾の速度が秒速1kmなので、その速度よりも8倍速いということです。
わずか直径1cmの金属片でも、乗用車が衝突するのと同じエネルギーを持っているのです。とんでもないですね。
衝突痕(wikimediacommons)
そして、1996年7月26日、恐れていた事態がついに起きました。
ひとつのスペースデブリが人工衛星に衝突し、その衛星の一部をもぎ取ってしまったのです。
それまで、人工衛星の表面にくぼみを作ったことはありましたが、電波を出している衛星が壊されたのはこれが初めてでした。これが悲劇の幕開けだったのかもしれません。
人間は宇宙で生きて行けるのか
ロケットの原理を初めて科学的に解き明かしたのは、ロシアのコンスタンティン・ツィオル・コフスキーでした。実際に本格的なロケットを開発し、飛ばしたのは、ドイツのヴェルナー・フォン・ブラウンでした。
ヴェルナー・フォン・ブラウン(wikimediacommons)
ロケットという宇宙へ出る手段を手に入れた後、人類は考えます。
「人類は宇宙に出ても生きていけるのだろうか」と。
まず、宇宙は真空であり、食物などの生活に必要なものがありません。
これには宇宙服や気密室のなかで地球から持参したものを使って暮らすことが必要になります。
絶対的な条件ではありますが、このようにすれば科学技術の力で解決することができます。
次に、宇宙は地上からではわからない未知の環境であり、なかでも放射線とメテオロイド(宇宙に漂う天然の物体)が気になります。
このようにして、現在行われている宇宙飛行などができるようになりました。
さすがに宇宙で地球のように生活する方法は、まだ見つけられていませんが。
しかし、ここまで考えた後、思いがけないことが問題となりました。
自然の環境ではなく、人類が宇宙開発を行った結果出てきた自業自得の問題、『スペースデブリ』です。
スペースデブリはどうやってできる?
はじめに
さて、デブリはどのようにできるのでしょうか?
スペースデブリのでき方は大まかに、
(1) 使用できなくなった人工衛星、打ち上げに使ったロケットの残骸などが
スペースデブリとなる。
(2) デブリと衝突し、デブリが増える。
(3) 人為的な理由でデブリが増える。
の3パターンが存在します。このうちの2つを詳しくみていきましょう!
デブリはどのようにできるのか?
(1)使用できなくなった人工衛星などがスペースデブリとなる
① ロケットが地上から発射されました。
② どんどん高度が上がっていきます。
③ 高度250km付近になるとロケットの燃料である下段と本体の上段が切り離されます。
④ この下段は宇宙空間に留まり、スペースデブリとなります。
⑤ そして他のデブリと同じように高度37000km付近の墓場軌道に移動します。
(2)デブリと衝突しスペースデブリが増える
① 墓場軌道ではなく静止軌道上に運営を終えた人工衛星があります。
② 運営を終えた人工衛星とお仕事中の人工衛星が衝突してしまいました。このときに生じた破片を微小デブリといい、微小デブリのかたまりを「デブリ・クラウド」といいます。
③ 衝突されたお仕事中の人工衛星は損傷してしまいこれからの仕事にも支障をきたすようになってしまいました。
④ デブリとデブリが衝突し、またデブリができるようになってしまいました。
つまり、デブリがデブリを呼ぶのです。
デブリとデブリが衝突し合いデブリの量が増えてしまう現象
このような現象をケスラーシンドロームといいます。
最終的にデブリはどうなるのか
スペースデブリは人工衛星と同じく様々な軌道上に存在しています。
地球の重力や大気抵抗により徐々に高度が下がり、200km以下になると急激に高度低下し、地球に落下し圧縮熱により消滅します。
燃えにくい素材でできた大型の構造物になると地上に落下する場合もあります。
現在のところ、スペースデブリが落下し、人間に当たってしまうような事故は起こってはいません。
しかし、下の写真のように実際に落下してしまったデブリもあります。
→詳しくは「スペースデブリの歴史」へ!
スペースデブリの一部が燃え尽きずに地球に落ちたもの(wikimediacommons)
デブリの危険性
デブリの威力
上の画像は 立命館大学 理工学部 衝突工学研究所 にて超々ジュラルミンというとても固い物質に右のプラスチックと金属でできた弾をぶつける実験の結果です。この実験では実際のデブリの半分の速度しか出ていないにも関わらず、このように分厚く固い超々ジュラルミンが貫通してしまいます。
このようにデブリは非常に高い威力を持っていることがわかります。
デブリによる影響
スペースデブリは8km/sほどで地球の周りを回っています。
このスピードは1km/sのライフル銃の8倍ほど、地球を1時間半で一周できる速さです。
そんなスペースデブリの危険性とは一体何か?具体的に考えていきましょう。
10cm以下の小さなものでも、人工衛星を爆発させるこどができます。
直径3mmのアルミ球が10km/sで衝突した場合とボーリングの球が100km/hで衝突した場合の運動エネルギーは等しいです。
そんなスペースデブリが国際宇宙ステーションや人工衛星に衝突した場合、デブリの大きさがたった10cmほどでも、簡単に破壊されてしまいます。
私たちの生活は数多くの人工衛星の機能によって支えられています。
例えば、インターネット、気象情報、GPSといったものです。
それらがスペースデブリによる衛星の破壊によって機能しなくなってしまえばどういったことが起きるのでしょうか?
ケスラーシンドローム
スペースデブリ同士、または人工衛星などに衝突すると、新たにスペースデブリが発生してしまうのではないかという理論。
これをケスラーシンドロームといいます。
名称は提唱者の1人であるNASAのドナルド・J・ケスラーが由来です。
スペースデブリの危険性は、自然に増加していく可能性があるという点にもあります。
デブリ同士の衝突により、デブリの雲「デブリクラウド」が発生し、衝突する確率が上がり、またデブリ同士が衝突するという破壊的連鎖が起き、最終的には宇宙開発を行うことができなくなってしまいます。
そして、2009年2月10日にロシアの軍事衛星とアメリカイリジウム社の通信衛星の衝突が、デブリの密度がもっもと高まっている高度800kmで起きました。
高度800kmでデブリ増加の悪循環が起きる可能性が上がったのです。
デブリの歴史
スペースデブリ歴史年表
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1957年10月
スプートニク1号はソビエトのチュラタム基地より打ち上げられ,
衛星の形は、直径58cmのアルミニウム製の球で、それに長さ2,4mのアンテナ4本がついていて、重量は83,6kgです。
電池の寿命は3週間でしたが22日後に電池が切れた跡も周回し続け、打ち上げてから92日後の1958年1月4日に大気圏に突入して消滅しました。
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11月
スプートニク1号のときと同様、ソビエト連邦のチュラタム基地より打ち上げられました。重量は508kgでスプートニク1号のときよりも重くなっています。スプートニク2号にのせられたライカ犬は「打ち上げから10日後に薬入りの餌で安楽死させられた」とされていましたが、のちのロシア政府の情報によると、「ライカ犬はキャビンの欠陥による過熱で打ち上げの4日後に死んでいた」とのことです。
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1959年
国連宇宙空間平和利用委員会(UNCOPUOS)が国連に設置されました
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1961年4月
人類が初めて有人宇宙飛行をした際に搭乗した宇宙船は、ボストーク1号でした。このとき、初めて宇宙へ旅立った人間はソ連のユーリ・ガガーリンでした。宇宙から帰還した後の会見での、彼の「地球は青かった」という発言は有名です。
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6月29日
アメリカが Transit4A衛星を打ち上げ、その2時間後、ロケット最終段が突然何百個もの破片に分かれるのが観測されました。
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1963年5月9日
アメリカが4億84万本の微小針を「宇宙通信実験」と称して宇宙にばらまきました。
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1964年
アメリカではじめて偵察衛星が打ち上げられてから、世界では軍事目的である偵察衛星が打ち上げられるようになり、ソ連も偵察衛星を打ち上げましたが、回収直前に突然爆発を起こしました。実は、これはソ連が下した自爆命令によるものでした。再突入の手順に狂いを感じ、自国以外の国に落ちる予定になってしまいました。ソ連は情報が他国に漏れないよう、「コスモス50」に自爆命令を送信したのです。
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1965年11月26日
フランス初の人工衛星『アステリックス』は、アルジェリアからディアマンAロケットによって打ち上げられました。右の写真は『アステリックス』の模型です。
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同年
タイタンCは強力なロケットで、最終段はトランステージと呼ばれる2液式ロケットです。衛星を切り離したロケットのトランステージが、高度740kmでブレークアップをおこし、475個の破片が観測されました。
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1966年7月
フランスの人工衛星『スリーズ』が、1986年に破壊されたロケット『アリアン』のスペースデブリのうちの一つとぶつかりました。これがスペースデブリと人工衛星との初めての衝突でした。
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1968年12月
アポロ8号は地球周回軌道を離れて月を周回し、また安全に地球に戻ってきた初の宇宙船でした。サターン5型ロケットで打ち上げられ、月の周りを10回周り、地球へ帰ってきました。
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1969年6月16日
アポロ11号はニーム・アームストロングとエルウィン・オルドリンを月面にたたせました。月面に足跡残したエルウィン・オルドリンは世界的にも有名になりました。
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1970年
『おおすみ』は鹿児島県の宇宙空間観測所で打ち上げられました。全長1m、重量は24kgで、人工衛星の打ち上げの技術の習得と、衛星についての工学的試験を目的に作られました。落ちてきたのはつい最近で、2003年8月2日に落下しました。
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同年
1970年代に入ると、アメリカは宇宙ステーションの計画をしはじめました。宇宙ステーションは大規模な宇宙施設と、特徴付けられたので、他の宇宙物体との衝突の機会が増えることが容易に予想されました。NASAの内部資料では、当時、宇宙での衝突の危険性を検討し始めたことが伺われます
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1971年
イギリス初の人工衛星である『アリエル1号』はアメリカのフロリダ州にあるメリット島のケープカナベラル空軍基地から発射されました。『アリエル1号』は1960年代から1980年にかけて行われた、イギリスの人工衛星プログラム『アリエル計画』の第1号です。
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1978年
ソ連の原子炉衛星『コスモス954号』は1977年9月18日に打ち上げられましたが、運用終了後、原子炉の分離、高度の高い安定した軌道への移動に失敗し、大気圏に突入、カナダに落下しました。人的被害はありませんでしたが、放射能を帯びた破片が広範囲に飛び散る事態となってしまいました。
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1979年7月
インド初の人工衛星『アリヤバータ』はX線天文学、超高層大気学、太陽物理学の実験を目的として、インド宇宙研究機関によって制作されました。1976年から1997年まで、インドの2ルピー紙幣の裏面に『アリヤバータ』が描かれていました。
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同年
NASAは1973年5月14日にアメリカ初の宇宙ステーション『スカイラブ』を打ち上げました。上記で説明したアメリカの宇宙ステーション開発計画の完成版です。自宅の屋根に落ちた『スカイラブ』の破片を17歳の少年がサンフランシスコの新聞会社に持っていったところ、10000ドルの賞金を手にしたらしいです
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1981年4月10日
ガガーリンのフライトからちょうど20年、スペースシャトル『コロンビア号』が宇宙へ旅立ちました。スペースシャトルには、何かの破片や氷のかけらなどがたくさん降りそそぎ、断熱タイルには300~400個の傷ができました。
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1983年7月18日
ソ連の原子炉衛星「コスモス1402」がカナダに落下
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1984年
1984年、スペースシャトル「チャレンジャー号」は歴史に残る作業を行っていました.宇宙飛行士であるヴァン・ホフテンは、スペースシャトルの荷物室で衛星「ソーラーマックス」の修理を行ったのです。 これは宇宙での修理の最初の試みでした。
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同年
長期曝露装置(LDEF)が大量のスペースデブリを確認しました。
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1985年9月13日
アメリカの太陽観測衛星がミサイルにより破壊されました。 これにより大量のデブリが拡散しました
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1986年1月
3スペースシャトル『チャレンジャー号』は、打ち上げられてからわずか73秒後、固体燃料補助ロケットの破損により空中分解しました。この事故により乗り組み員7名が犠牲となりました。
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2月
後に説明しますが、「ミール」は2001年3月に地球に落下しました。『ミール』という名前は、ロシアで「平和」「世界」を意味します。
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1987年
NASAとESAがスペースデブリ低減のため協力開始しました。
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1988年2月
レーガン大統領によるデブリ最小化を国家方針とする政策が出されました。
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1990年5月
長期曝露装置(LDEF)の回収が開始しました。
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同年
1990年5月、2年に1度日本で開かれる国際会議「宇宙技術および科学のシンポジウム(ISTS)」が東京の高輪プリンスホテルの一室で開かれました。その会議の合間にたまたま行われた自由な意見交換で、スペースデブリが話題となりました。
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1992年
1992年、毛利衛がNASAのペイロードスペシャリストとして宇宙へ
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1993年
国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)が発足しました
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1998年
国際宇宙ステーション組み立てが開始しました
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2001年3月23日
2001年、ロシアの宇宙ステーション「ミール」の廃棄が決定されました。ミールの全長は約33メートル、質量は約140トンです。年表を見ていただければわかると思いますが、ミールが打ち上げられたのは1986年、わずか15年で宇宙ステーション「ミール」は廃棄されてしまう結果となったのです。この結果に特に慌てたのは日本でした。落下する直前に日本上空を通過するからです。
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2002年
スペースデブリの低減に関するガイドラインや提案、行動規範はJAXAやNASA、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)、ロシア連邦宇宙機関から発行されています。2002年に開かれた、国際機関間スペースデブリ調査委員会(IADC)の会議でスペースデブリをこれ以上増やさないための「スペースデブリ低減ガイドライン」が作成されました。
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2003年
スペースシャトル「コロンビア」帰還中に爆発事故を起こしました
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2007年1月12日
中国が自国の衛星「風雲1号C」を地上からミサイルで爆破 これにより大量のデブリが拡散しました。
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6月
2007年には、このガイドラインが国連の宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)に受け継がれて、「国連宇宙デブリ低減ガイドライン」が決議されました。しかし、このガイドラインをやぶったからといって罰則はありませんので、従わない国なども出てきたりします)
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2008年2月21日
アメリカが自国の偵察衛星を爆破
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2009年2月10日
2009年2月10日、シベリア北部の上空790kmの宇宙空間で、アメリカとロシアの人工衛星が衝突をおこしました。 今回のような人工衛星同士の意図せぬ衝突事故は人類史上初めてでした。
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同年
国際宇宙ステーション内の日本の実験施設「きぼう」完成
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2013年11月
若田光一さんが日本人初の船長に就任し、宇宙へ行きました。
私たちの意見
歴史の「科学者たちの見解」を見て頂きお分かりになったと思いますが、いろんな科学者たちがかなり昔から「スペースデブリは危ない」と警告しているのです。
しかし、宇宙では、軍事的な実験やブレークアップ、人工衛星同士の衝突などにより、スペースデブリが、今もなお、増え続けています。
これほどの問題なのに、いまだ、スペースデブリの知名度は低いままです。
『人工衛星をミサイルで撃ち落とす』という一見馬鹿げているような実験も、アメリカとロシアが争っていた冷戦時代が終わった今でも、まだ行われています。なぜ科学者たちの声が届かないのか、なぜ対策が行われないのか。
たくさんの疑問が生まれてきました。スペースデブリにはどうやら、たくさんの『大人の事情』が絡んでいる気がします。
また、年表のなかで、人工衛星が何度も地上に落ちてきていることを見つけたと思います。
被害は宇宙だけではなく、私たち人類が住む地球上にまで及んできています。人工衛星を作る際、ただ打ち上げて観測することだけを考えて作るのではなく、仕事を終えた後も、どうしたら安全に回収・破棄することができるかも考えて作る必要があると思いました。
しかし、その一方で、「国連宇宙空間平和利用委員会(UNCOPUOS)」「国際宇宙機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)」「スペースデブリ研究会」など、スペースデブリの対策を進める機関もいます。
スペースデブリが問題となっていくこれからはきっと、これらの機関が活躍していく時代となるでしょう。
デブリ環境
デブリはどれくらいあるの?
NASA提供
宇宙にどれくらいの数の人工物があるのかは実はわかっていません。
低い軌道であれば10cm以上、高い軌道であれば1m以上の物体はレーダー、望遠鏡などによって 管理(カタログ化)されています。
このようにカタログされた物体の内訳は、実際に使われている衛星、既に機能 しなくなった古い衛星やロケットの上段、それに加え打ち上げの途中や衛星の切り離しのときに 放出された破片などです。
実はカタログ物体の中で最も多いのは破片であり、驚くべきことに全体の半数近くを占めているものです。
ちなみに、現在使われている衛星は全体の6%しかありません。
→つまり94%はスペースデブリ、つまり宇宙のゴミとなっているのです!!
軌道上は混み合っている!?
人工衛星などの軌道はSNN(米国宇宙監視ネットワーク)によって管理され、打ち上げを行う前にどのくらいの高度の場所をどのくらいの周期で使用するのか申請などをしなければなりません。
下のグラフは上の図で示した軌道別のカタログ物体を表したものです。
図から、カタログ物体は宇宙に均等に分布しているもではなく、特定の軌道に集中していることがわかります。
静止軌道上には通信衛星などの人工衛星が分布しており、密度にピークが見られます。高度700〜1000kmの高度は主に地球を観測する衛星のための軌道で、次のピークである高度1500km付近は軍事的目的で打ち上げられた衛星の軌道です。
地球を観測する衛星の軌道上と軍事的目的の衛星の軌道上ではブレークアップが多数起こっており、これにより大量の破片が生じデブリが発生することが実はピークを構成する本当の理由なのです。
先ほども述べたように、実際に使われている衛星などがどれほど少なく、デブリがどれほど多いのかをここからも理解することができます。
デブリが減る時
スペースデブリの数は右肩上がりに増加していますが、11年ごとに減少するときがあります。
これは太陽活動の活発化によるもので、活発なときには地球の大気層が膨らみ高度500〜1000kmの大気密度は大幅に上昇します。
物体の大気抵抗は密度に比例するので、この期間には物体の落下が促進されます。
しかしこれで減少する量も全体から見れば微々たる物であり、この11年に1度の減少する時期だけに頼っていてはスペースデブリの問題は解決されません。
ブレークアップ
ここでは、先ほどの章で述べたブレークアップをさらに詳しくみていきます。
ブレークアップとは、人工衛星などが何らかの原因で爆発し破壊され大量のデブリが発生してしまう現象です。
①意図的な破壊
「意図的な破壊」とは、衛星破壊実験や回収に失敗した衛星を破壊するものです。
自国の衛星にミサイルを打ち込むとどのように破壊されるのかを確認するとき、また軍事衛星が他国に落下し情報が流出する危険性があるときに破壊したり自爆させたりします。
このような人為的な破壊はブレークアップとしての件数では最も多く、割合としては3分の1を占めています!
→具体的な例
・衛星破壊実験…コスモス249号
・中国が自国の衛星「風雲1号C」を地上からミサイルで爆破
②偶発的な破壊
意図的に人工衛星を破壊するのに対し偶発的に人工衛星が破壊されることがあります。
例えば、衛星内の自爆機能が偶然作動して大量のデブリが生じる危険性があります。
③・④電気回路・推進系の爆発
人工衛星などは宇宙に行く際にロケットで運ばれますが、ロケットの電気回路が突然ショートして爆発したり、宇宙に行くための推進系と呼ばれるロケットのエンジンなどが何らかの原因により爆発したりしてブレークアップを起こすことがあります。
(原因としては、燃料が入っている壁に亀裂が発生し推進剤が漏れ出した状態で他の機体などと衝突することで大規模な爆発が起こると考えられます。)
⑤不明
①〜④以外の約40%のブレークアップの原因はわかっていません。
これらの中にはデブリ同士の衝突による爆発もかなり存在すると考えられています。
→アニメーション
•スペースデブリのできかた2
私たちの意見
見ていただいてわかるように、今の宇宙空間の人工物体はデブリが大多数を占めていて極めて危険な状況です。
ブレークアップの欄で説明した各項目について私たちの意見を主張したいと思います。
①「意図的な破壊」に物申す
使用されていない衛星などが大気圏で燃えつきず地球に落下してしまうと考えられるときに衛星を破壊することはやむを得ないでしょう。
ですが、衛星破壊実験は本当に必要なのでしょうか。
宇宙が誰の物でもないからといってスペースデブリを大量に生み出すことは間違っていると思います。
現在スペースデブリの発生防止に関するガイドラインには一切拘束力がなく、「できることなら守ってね〜」というような状態です。(国際連合での問題点と同じですね。)
衛星破壊実験を全面禁止とする強い拘束力を持った新たなガイドラインや条約、法律を作ることが必要です。
③・④ 「推進系の爆発」に物申す
推進系の爆発によるブレークアップは切り離す際に推進材をタンク内に残していることが
そもそもの原因です。
よって、切り離したらバルブを開け、タンク内を空にさせることが必要です。
1982年に推進系の爆発によるブレークアップが確認されてから、NASAをはじめ各国が衛星を切り離すとすぐにタンクのバルブを開け中に残った推進剤を排出する機体をつくりました。このような機体は今のところ一度も爆発していません。
これらは宇宙でデブリが増える事故が起きないようにするための提案や意見ですが、人工衛星を打ち上げればデブリは増えるので根本的な解決にはなっていません。
しかしながら、このように1つ1つ対策をして小さなデブリを生み出さないことはとても重要なことなのです。