北海の汚染
今回の大量死の原因としてあげられているのはウイルスによる感染だが、それと同時にこの北海の汚染が、アザラシの免疫力を低下させたことが大きな原因の1つとされている。
この北海の環境汚染についての発表で北海の汚染は日本の10倍以上も汚染されているという観測データがある。これを聞いた専門家達は、北海の汚染はもう限界まで達しているという意見もある。そのため、この大量死が起きなかったとしても、必ず何らかの影響が出るほどに北海の汚染はかなり深刻な状態を迎えている
・
法律と現実のギャップ
・ヨーロッパの国スウェーデンは環境保護に力を入れている国として有名だ。しかし、環境保護のモデルのようなこの国でも海を汚染していた。スウェーデンにある化学工場からは多量のスモッグが出されていたのだ。さらに、工場の周りでは海面が白くにごっていた。これは工場が出している排水のせいであり、ここの海域で取れる魚は奇形が多いことで問題になっている。この魚にはガンが起きていて、体の表面にブツブツとした腫瘍ができていたり、体が曲がったりしている。
だが、海を汚染しているのは工場の排水だけではなかった。集落の周りでも海面は白い泡で覆われていたのである。これは集落から流れてくる生活廃水が直接海に流されていたためだった。
このような汚染が進行する海ではもうほとんどアザラシを見ることができなくなり、1,2頭見ることができるのも珍しい状態になってしまったと住民は話している。
INDEXに戻る
オランダでもスウェーデンと同じようなことが起きていた。
オランダ東部の海は「バドン海」と呼ばれている。この海はムール貝やヒラメ、カニ、エビの宝庫でアザラシや海鳥の絶好の住処となっている海だった。
1955年の調査で8000頭のアザラシがこの海に生息していることが確認されている。ところが大量死の起きる前の1977年にはたったの380頭しか確認されなかったという。この事実を重くみた政府は1981年にアザラシを保護するための法律を作ることにした。(この頃にオランダの
アザラシ病院ができたとされている)これらの努力によって大量死が起きる前の年には1000頭にいたるまでアザラシの数は回復したという。そんな回復の兆しを見せたところに事件が起こり、またもやどん底にたたき落とされたのである。今では、繁殖期には300〜400頭のアザラシが確認できたが、夏が終わるくらいには80頭くらいに減っているのが現状だ。この海の黄色いブイの下にはパイプラインの出口があり、ここから未処理のまま生活用水が流されているため、周辺の海は黄色く、特有の匂いがする。このため、海岸付近では大腸菌やバクテリアなどが繁殖しやすくなっている。これは決して特別な例ではなく、このあたりの下水のすべてはこのタレ流しによって、最終的な処理を受けている。
INDEXに戻るとある記者がオランダの環境大臣にインタビューしたところ、大臣は胸を張って「わが国の環境問題はすでに解決した。数々の汚染を規制した法律によって、オランダの環境はクリーンに保たれている」と言った。だが、この言葉とは裏腹にオランダの科学工業地帯の配水管からは何も処理されていない真っ白な水が海に流されている。
オランダでは大切なかけがえのない海が、浄化槽の変わりに使われている。さらにオランダだけではなく、北海沿岸の国々でも、法律や政策とはかけ離れた汚染が存在しているのが現状だ。この北海の汚染の深刻さは、政治的な面と現実の汚染との間に大きなギャップがある。
INDEXに戻る現在、ロンドンでは下水処理が問題になっている。ロンドン周辺の人口に加えて1000万人を超える住民の生活廃水や、工場から出る工業排水の量は膨大で、テームズ河沿いにある下水処理工場では、沈殿物(ちんでんぶつ)を取り除いている。ここで問題になるのは処理された後に残る汚泥である。汚泥には、水銀やカドミウムなどの重金属や、様々な化学物質が含まれている。その総量は年間450万トンに達する。さらに、驚くことにこの汚泥は1日4回、北海に捨てられているのだ。イギリスの農林省は、汚泥の投棄による北海の汚染量は全体の1%にも満たないといっている。しかし、汚泥の投棄は、どう考えても海に生きる生物にとって無害とは言いきれない。また、ロンドンでは、この問題だけでなく周辺工場から約150本のパイプラインがテームズ河に直接廃水が流されているという問題もある。廃水には普通許容量以下の有害物質しか含まれていないが、重金属や有機塩素化合物などの汚染は、ひそかに進行し長期間汚染されると考えられている。そしてこの汚水の行きつく先は北海なのだ。
ここで一番問題となっているのは、北海に面しているヨーロッパの国々の中でイギリスだけが、廃水処理で出た汚泥を北海に捨てているという事実だ。海に囲まれたイギリスでは、伝統的に海がコストの安い廃棄物処理場だと考えてきたようだ。そこでの大きな問題としては、家庭からの廃水と工場との廃水が混じることだという。これが処理場で処理され、そこで出た汚泥が北海に捨てられるのだ。汚泥には当然大量の有害物質が入っているし、バクテリアも入っている。これが北海の生態系を破壊するのは当然の結果だという。
だがその反面、このテームズ河には自然が戻りつつあるという。1950年代の初め、テームズ河は生物学的に見てほとんど死んだ状態だったのだが、現在では溶存酸素量(河の中にある酸素の量)は10%まで回復し、魚が生きることのできる環境まで改善されたといわれている。
INDEXに戻る北海を汚染する有害物質の大半は、河川を経由して流れ込んでくる。ヨーロッパ大陸を横断する国際河川による汚染は、北海沿岸から流されるものより、はるかに大きな問題を抱えている。その代表的な例としてライン河を調べた。
ライン川はアルプス山脈を源にスイス、フランス、西ドイツを経てオランダを通り、北海に注いでいる。全長は1320キロメートル、流域面積は22万平方キロメートルに及ぶ。このライン河は、河口から900キロ上流まで貨物船の運行が可能であり、内陸の水路としてはアメリカの五大湖に次ぐ交通量を持っている。河の要所要所には信号があり、渋滞を示す表示板まで備わっている。実際、河の上をひっきりなしにタンカーや工業用原料を満載した船が行き来している。日本の河川とは違い流れも穏やかなので、上りも下りもスピードは変わらず、しかもコストも安いため陸上の貨物輸送にも勝ると言われている。
このライン河は古くから経済活動の中心となっていて、内陸部の工業を発展させた。スイスのバーゼル、西ドイツのルール地方、オランダのロッテルダムなどヨーロッパの代表的な工業地域を支えていた。そのためこの流域には必然的に、生活排水や工業廃水が流れ込んでいる。その量は、肥料や洗剤などに含まれる窒素の場合、貨車にして年間1万4000台分、リンの場合は年間1500台分という膨大な量が川に流れ込み、北海にたどり着く。さらに鉛や水銀などの重金属や化学物質も河に排出され、PCBなどの有害な化学物質だけでも年間に1万5000トンもの量が河に捨てられているという。つまり、このライン河は、工業の原料や製品を運ぶだけでなく、きわめて安上がりな廃棄物や有害物質の運搬の役割としても利用されていることにもなる。