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トランジスター

半導体を使用した電気同路素子。通常3個以上の電極をもち、それらの電極に加える電圧あるいはそれらに流れる電流を制御することにより、増幅機能をもたせ たり、スイッチとしての働きをさせることができる。大きく分類すると,バイポーラートランジスターと電界効果トランジスター(FET)の2種類がある。

バイポーラートランジスターの構造と増幅動作

バイポーラートランジスターはp型半導体およびn型半導体を用い,pnpまたはnpnの3層構造とし、それぞれの領域に電極端子を設けたものが基本である。pnpトランジスターを例にして、その構造と増幅動作の原理を説明する。aはpnpトランジスターの構造を原理的に示す。またbは実際に多く用いられる構造と基本的な要素を示す。1個の素干の大きさは、1辺の長さが数十ミクロン、厚さが100ミクロンら程度のものが多い。aにおいて、左側のp型領域はエミッター、中央のn型領域はべース、右側のp型領域はコレクターと呼ばる。またエミッターとべ―スとの間に形成されているpn接合はエミッター接合、ベースとコレクターとの間の接合はコレクター接合と呼ばれる。ふつうトランジスターに増幅動作させる場合には、エミッター接合が傾方向、コレクター接合が逆方向のバイアスとなるように電圧を加える。すると、エミッターからベ−スには正孔が、またべ−スからエミッターヘは電子が流れ込む。n型半導体においては電流を構成するのは主として電子であるから、電子は多数キャリアーと呼ばれ、正孔は少数キャリアーと呼ばれる。p型半導体においては、正孔が多数キャリアー、電子が少数キャリアーである。したがってバイポーラートランジスターのベースには、少数キャリアーが注入されることになる。ベ−スは1ミクロンから数十ミクロン程度に薄く作られるため、べ−スに入った正孔は大部分がべ−ス領域を通りぬけ、コレクター電流となり、わずかの部分がベ−スからベ−ス電流として流れ出す。エミッター接合は順方向にバイアスされているから、その抵抗はたとえば50オームと低い。それに対し、コレクター接合は逆バイアスされているから、抵抗は高く、たとえば10オ−ムといった値をとる。前述したようにエミッター接合とコレクター接合を流れる電流はほぼ等しい。したがって、抵抗の低いェミッター接合を入口とし、抵抗の高いコレクタ−接合を出口とすると、小さな電力が入っても、大ぎな電力がとり出せることになる。これをトランジスターの増幅機能という。前述したようなエミッターとべース間の抵抗およびベースとコレクター間の抵抗の場合、入力電力と出力電力の比はおよそ5000になる。べ−ス電流をいくつかの直に固定したときの、エミッターとコレクター間の電圧と、コレクター電流の関係をトランジスターの静特性と呼ぶ。

スイッチ動作

エミッター接合、コレクター接合とも逆方向バイアスになるように電圧を加えると、コレクター電流は流れない。この状態はちょうど開いたスイッチと同じである。それに対し、両方の接合とも順方向バイアスになるように電圧を加えると、エミッター電極からコレクター電極の間に抵抗の高い部分はなくなり、容易に電流が流れる。この状態はスイッチが閉じた状態と同じである。このように、各電極に加える電圧の大きさおよび方向を変えることにより、トランジスタ−をスイッチのように働かせることができる。この電子的なスイッチは機械的なスイッチと異なり、断続する接点がないため、動作速度も速く寿命も長い。またこの機能はコンピュータ−の記憶装置や演算装置にも応用されている。

電界効果トランジスターの構造と動作

電界効果トランジスターにも多くの種類がある。MOS。というのは、金属電極(Mは金属metalの頭文字)絶縁性の酸化膜(Oは酸化物oxideの頭文字)半導体(Sは半導体Semiconductorの頭文字)の3層構造となっているためである。1辺の長さはおおよそ数百ミクロン程度である。酸化膜の上の金属電極をゲート電極といい、ほかにソース電極とドレーン電極がある。いま、半導体がp型の場合、ソースおよぴドレーン電極の部分はn型にする。ソ−スからドレーンまで横方向にながめてみると、ニつのpn接合がp領域を共通にして背中合せになっていることがわかる。したがってソース電極とドレーン電極のどちらをプラスまたはマイナスにして電圧を加えても、かならず一方のpn接合が逆バイアスになるため,ソースとドレーンの間には電流は流れない。ところが、ゲート電極に十分大きなプラスの電圧を加えると、酸化物の下のp型半導体の部分からはp型半導体の多数キャリァーであるプラスの電荷をもつ正孔が追い出され、逆にマイナスの電荷 をもった少数キャリアーである電子が集まってくる。そして集まってくる電子のほうが残った正孔より多くなり、酸化膜の下のわずかな深さの部分は、n型の導電性を示すように変化してしまう。このことを反転という。すると、ソースおよびドレーンはもともとn型であるから、ソースからドレーンまで横にn型半導体でつながったことになる。この状態でソース電極に対し、ドレーン電極にプラスの電圧を加えれば、ソースとドレーンの間にはもはやpn接合は存在しないから、電子はソースからドレーンへと移動し電流が流れる。ゲート電極にプラスの電圧を加えることにより、n型に反転し電流が流れる通路になった部分を、チャンネルと呼ぶ。チャンネルの身さは10〜20ミクロン程度以下、また深さは数ミクロン程度以下のものが多い。チャンネルは、この場合n型になっており、そこを流れる電流は多数キャリアーによる。つまり、バイポーラートランジスターにおいては少数キャリアーと多数キャリアーの両方が電流を構成するのに対し、電界効果トランジスターにおいては少数キャリアーのみが電流の担い手となる。そのチャンネルの深さは、ゲート電極に加えられる電圧の大きさにより制れる。そこで、ソース‐ドレーン間電圧とドレーン電流の関係は、バイポーラートランジスターの静特性と似たものになり、バイポーラートランジスターの場合のべース電流の働きを、ゲート電圧がすることになる。ゲート電極の金属と半導体との間には、絶縁性の酸化膜がはさまれているから、ゲート電極には電流は流れない。したがって、チャンネルの深さを変化させるためにゲートに加える電力は、ほとんどゼロなのに対し、チャンネルの深さの変化に伴いソース‐ドレーン間の抵抗が変化し,ソ−ス‐ドレーン間電流が変化するから、外部にとり出す電力は大きく制御できる。これが電界効果トランジスターの増幅機能である。また、電界効果トランジスターにもスイッチとしての動作をさせることができる。

トランジスターの歴史と用途
トランジスターは1948年アメリカのべル研究所のバーディーンJ.Bardeen(1908〜)とブラッテンW.H.Brattain(1902〜)により発見された。そのときはゲルマニウムの表面に、2本の針をたてた簡単な構造であったが、2本の針のうちの一方がエミッター、もう一方がコレクターとして働いたのである。それが後に点接触トランジスターと呼ばれるものになった。以後、装置としての信頼性が高く、高い周波数や大きい電力での使用が可能であるようなトランジスターの開発が進められた。一方、電界効果トランジスターは、52年アメリカのショックリーW.B.Shockley(1910〜)が提案した。従来、増幅の働きをする電子装置としては、真空管が使用されていたが、トランジスターでは真空管のようにフィラメントを加熱する必要がないため、消費電力が小さく、寿命も長い。また小型であるため集積回路に組み入れることも容易である。そのため、現在ではコンピューターをはじめ多くの電子機器や通信装置に使われている。