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プラズマ

自由に動きまわる正負の荷電粒子が共存し、全体として電気的に中性であるような物質の状態をいう。プラズマは生物学で血しょう、原形質などを意味する語であるが、この語を最初に電離気体という意昧に用いたのはアメリカの物理化学者ラングミュアで通常の希薄気体放電管の陽光柱の部分の状態に対して名付けたのが始まりである(1920年代)。気体の中に強い電流を流したり、気体を高温に加熱したりすると、一部または全部の電子が原子から離れて自由に飛び回るようになり、その結果、原子は正電気を帯びたイオン(陽イオン)になる。このような状態が典型的な気体プラズマである。管の中に気体を入れて放電を行うとプラズマが得られる。たとえば、ケイ光灯の両極間に電圧をかけて点灯すると、封入してある水銀の蒸気が電離して、水銀イオンと自由電子とが共存するプラズマができる。また地球の大気の上層部では、太陽からの強い紫外線によって気体が電離し、いくつかのプラズマの層を形成している。これを電離層という。ここには自由電子が豊富に存在するため、金属と同じように電波を反射させる性質がある。太陽その他の星の内部もきわめて高温、高圧、高密度のプラズマである。たとえば太陽は、内部温度がおよそ1600万Kで,中心部分は水素主成分とするプラズマでできており、この高温度は、高速の水素原子核どうしが衝突して起こす核融合反応(原子核融合)によって維持されている。
プラズマの構成要素は荷電粒子であるから,プラズマは電気伝導性をもっている。また外部から磁場をかけると、それまで自由に走り回っていた粒子は、磁場からのロ−レンツ力の作用により、磁力線に巻きつくらせん状の運動を行うようになる。このために、各粒子の運動の可能な範囲が著しく制限される。またプラズマの中に電流を流すと、電流のつくり出す磁場の作用によってプラズマ白身がひも伏に細くしぼられる。これをピンチ効果という。これらの性質を利用すると、高温プラズマを容器の壁に触れさせないで狭い空間内に閉じ込めることができる。
さまざまな分野でプラズマの利用が研究されているが、その中で最も関心がもたれているのは原子核融合への応用である。水素は地球上に無尽蔵にあるので、その高温プラズマをつくり、太陽で起こっているのと同じ核融合反応を実現させて大量のエネルギ−をとりだそうとする研究が世界的に行われている。しかし地球上でこれを制御しながら行うには,太陽の内部よりもさらに高い1億Kという超高温を実現し、しかも安定なプラズマをつくり出すことが必要である。そのために、前に述ベたプラズマの性質を利用するさまざまな試みがなされているが、まだ実用段階には至っていない。また石油や石炭を燃焼させるときにできる高温の炎もプラズマであり、これに金属ナトリウムを加えて電気伝導性を高め、ジェットにして磁場の中を走らせることによって発電を行うMHD発電もその実用化をめざして研究が進められている。このほかプラズマは金属の溶融や加工、特殊化合物の製造などに利用されており(プラズマジェット加工)、さらにプラズマジェットを利用してその反作用で宇宙船の制御を行ったり、ロケットを推進させる方法も研究されている。