感電
電流が人体を通ること、およびそれによって起こる障害。工業電流によるものと、自然に発生する電気の放電(落雷)によるむのとがある。電流が人体を通過すると中枢神経系とくに呼吸中枢の麻庫と心臓の心室細動を起こし瞬時にして死亡ずることがある。電流が人体を通るさいに最も重要な因子は皮膚の電気抵抗であり、電流の種類(交流、直流)、電圧、強さ、作用時間なども重要な因子である。皮膚の最外層の角質層がとくに著しい電気抵抗を示し、角質層の厚い手のひら、かかとでは電気が伝わりにくい。いっぽう汗などでぬれていると伝わりやすく危険である。また200Vをこえると急激に危険度を増す。200V以下では直流のほうが交流より伝わりにくく交流電気の周波数が家庭電灯線の50〜60Hzのときは,同じ電圧の直流電気の約4倍の危険性があるという。しかし高周波(5万Hz以上)の場合は無害である。感電死例の最小電気りょうは50ミリアンペアであるが,100ミリアンペア以下では生命の危険はほとんどない。交流の場合50〜100Vの死亡例があるが、普通300V以上が致命的で150〜300Vでは危険といわれる。し かし食塩溶液で手足がぬれていたものでは50V以下の死亡例があるので低電圧でも注意を要する。したがって普通の家庭用電気による感電死は少なくなくたとえば浴室等の湿った所で電気洗たく機などを使用する場合、ア−スが不完全だと危険である。電流の流入出部の特異的な皮膚変化を電流斑(電流火傷)というが,これは小円形の皮膚のくぼみで,ときに空洞,穿孔がみられる。また導体の金属,銅や鉄などが溶けて皮膚に沈着することがあり,感電に特徴的なものである。電流の人体内の経路は明らかでないが,人体内部の電気抵抗は小さく,筋肉を1とずると神経2、骨5、皮膚10〜500といわれる。感電死例は即死と1日以内の死が大部分で、その原因は呼吸麻庫・心臓機能障害による呼吸停止および心臓停止と呼吸筋の強直麻庫、ショック等である。数時間以後の死亡はやけどによる腎不全やニ次感染が多い。感電死の80%以上が体の左半、とくに左手からの感電ということは心臓障害の多いことを示していよう。感電の大半は事故や過失によるもので、電気関係作業員以外の一般人にも高圧電流の事故が少なくないが、高圧よりも低圧の場合に死亡率が高いという統計結果が出ている。感電によって倒れた人を救助するときには,救助者が感電しないように注意しながら患者を電線等からひき離す。まずゴム靴などで救助者自身を絶縁する。つぎに皮またはゴムの手袋をはめ、患者を電線から離す。救いだしたら,呼吸停止には人工呼吸と心臓マッサ−ジがしばしば有効である。