心臓
人間の心拍数は年齢・心身の活動状態によって個人差がありますが、安静時の平均的な心拍数は健康な成人で1分当たり60〜84になります。心臓から送りだされた血液は、約1分間で全身をまわります。
- 大きさ・周囲との位置関係
心臓の大きさに個人差はさほどなく、だいたいその人の握りこぶしぐらいになります。重さは、大人で250〜300g程で形はラグビーボールの上部3分の1を切り取ったような格好です。また、周囲との位置関係は、前方が胸骨(胸の正面にあるしゃもじ形の骨)の後面、後方は食道の前面に接し、左右は両肺に包まれるようにして、胸部のやや左寄りにおさまっています。一番下のとがった部分を(心尖)といい、その上部の広い部分を心底といいます。心尖はかなり体表面に近い部分にあります。この心尖部はおおよそ左の乳頭の下にあり、この部分の肋骨と肋骨の間で心臓の拍動に触れることができます。健康診断の時、まず最初に医者が聴診器をあてて心音を聞く場所です。
- 構造
心臓の壁は特殊な筋肉の層で囲まれ、その外側を心嚢と呼ばれる2枚の薄い膜で包まれています。内腔の真ん中には縦の隔壁(房室中隔)があり、左心系と右心系に分かれています。左右の部屋はさらに、それぞれ上下に分けられます。つまり内部は右心房、右心室、左心房、左心室の四つの部屋があることになります。
心臓には、血液を調節する弁があります。場所は、血液が心房から心室に移るところと、心室から動脈へ出る ところです。右房室弁は右心房と右心室にある弁の膜で、3枚の尖った弁(三尖弁)からできています。肺動脈弁(右心室から肺動脈の出るところ)と大動脈弁(左心室から大動脈の出るところ)はつくりがまったく同じで、3個のくぼみ状の弁があります。左房室弁は左心房と左心室の間にある2枚尖った弁で二尖弁といいいます。また、帽子の形に似ているため僧房弁ともいわれます。
- 全身の血液循環
スタートは左心室です。この部分の心筋が収縮して(内腔に圧力をかけ)、血液を大動脈に押し出します。大動脈に出た血液は全身の動脈を巡り、毛細血管部分で細胞に酸素を渡し、使用済みの二酸化炭素をもらって静脈に乗り換えます。そして、全身の静脈を流れる血液は大静脈に集まり、右心房に戻っていきます。
右心房に入った血液(酸素の少ない静脈血)は、房心弁の開閉で、その下に位置する右心室に入る。右心室にたまった血液は、その収縮により肺動脈に流れ出す。肺動脈に流れた血液は肺胞に到達し、そこで過剰の二酸化炭素を肺の中へ追い出し、代わりに新鮮な酸素を持ち込む−いわゆる「ガス交換」をするわけだ。肺胞を通った血液は酸素が豊富になり、肺静脈を通って左心房に入り、その下にある左心室に僧坊弁を介して戻っていく。
そしてまた、左心室→大動脈・・・・・という循環を繰り返しているわけである。
- 心臓の収縮と拡張 (拍動)・緊張時における心拍数
心と心を結びつけるルート----大脳皮質で感じた情動の変化は、脳の底部、目の奥のあたりにある視床下部というところに伝えられます。そして、延髄の循環中枢から自律神経(交換、副交感神経)を介して心臓に伝達されます。心臓は定期的に、ある一定のリズムで収縮・拡張を繰り返し、血液を間欠的に全身の動脈に送り出し、血液循環の原動力となるポンプ作用を営んでいます。このポンプ作用を営むための心臓の働きを拍動といいます。心拍数は成人で1分間に60〜84回です。心臓の拍動は常に一定のリズムで規則的に繰り返されますが、これは心臓自体に自動性があるためです。そのリズムは洞房結館というところで生み出されています。つまり、ここである種の電気信号を発生し、これが心房と心室の間にある房室結節、さらに
ヒス束、プルキンエ線維に伝えられ、その結果、筋肉が刺傲を受けて収縮し、秩序ある心臓の拍動を起こさせているのです。この特殊な機構を刺激伝導系といいます。心臓は刺激伝導系によって規則正しい拍動をしていますが、心拍数のリズムの調節には、交感神経と副交感神経(迷走神経)の自律神経系と、種々のホルモンが関与しています。副交感神経は心臓に抑制的に働き、拍動数を滅少させ、交感神経は促進的に働き、拍動数を増加させます。この二つの神経が捨抗的に働くことによって、神経的なバランスがとられているのです。
*人間が精神的に緊張すると、このルートが作動し、交感神経の働きが高まり、心臓はドキドキと早く鼓動し始めます。それが適度の緊張・興奮なら問題はありません。むしろ、ふだん以上の力を発揮する場合もあります。しかし、いわゆる「あがった」状態では心臓から過剰に送りだされた血液は、ただ全身の血液を素動りするだけになってしまいます。さらに緊張が高まると、逆に副交感神経の作用が強くなっていきます。心拍数は抑えられ、必要な量の血液が全身に送られなってきます。全身硬直、金縛り状態です。いずれにせよ、緊急の事態にちゃんとした対応ができないわけだから、はなはだみっともない姿をさらすことになるのです。