木火土金水が、互いに相生・相剋して輪廻する事は既に述べた。
それと同時に、この木火土金水は、宇宙間の万象(方位・季節・時間・徳・色彩・惑星・十干・十二 支)のシンボルであり、言い換えれば万象がこの五気に還元され、また、配当されているわけである。
まず、五行配当表を使って説明していこうと思う。
この表はまず縦に読み、次に横に読んで頂きたい。
縦に読むことによって、万象が木火土金水の五気に配当されている事が分かる。
次に、横に読むことによって、気が同じものは互いに象徴関係にある事が分かる。
尚、この五行配当表は吉野裕子氏の著書にあるものを参考にしている。
この表を縦に眺めて、万象が木火土金水の五気に配当されている事を納得して頂けたなら、次は横に読んで頂きたい。
この中の色彩に注目して欲しい。色彩は、配当表の中でもとりわけ重要な要素である。
ここで選ばれた色を眺めて何か思い浮かばないか。
ここで選ばれた五色とは、赤・青・黄・の三原色に、全反射の白と全休集の黒を加えたもので
つまりは色の基本なのである。
この五色は、陰陽五行に基づいて考えてみると、その色が意味するものは、象徴関係にあるものである事が分かる。
そして、その色がつく単語(例:青春)について、陰陽五行を頭に入れて考える時、なぜ、その単語がその意味になったのかが自然に分かる。
この五色は、木火土金水を象徴するもので、つまるところ、それは宇宙そのものを象徴しているのである。
いかにこの五色が重要なものであることが分かって頂けたであろうか。
陰陽五行は感覚的な面があり、その著しい例がこの「色彩」である。木火土金水のそれぞれの性質と色彩を組み合わせてイメージを膨らませていくと、それと象徴関係 にある物が自ずと分かってくる。
簡単に解説してみよう。表を参考にしながら読むと分かりやすいだろう。
1. 木気
陰陽五行において、木の本性を「曲直」とする。
木は、地中で発芽した時から、進む事が可能な限り進み続ける。たとえ障害物があったとしても 曲がってまた進む。
これが「曲直」たる所以である。
五気の中で、生命に溢れ、成長(発展)が望めるのは唯一、木気のみである。
植物を象徴する色、 といえば、「青」しかないだろう。
また、方位として考えると、毎朝太陽が昇ってくる方角、つまり「東」をおいて他に無い。
同様に、季節においても、 息吹きあふれる「春」が最も適当であるといえるだろう。
「木気」は、生気を司る。
2. 火気
陰陽五行において、火の本性を「炎上」とする。
火は、様々な性質を持つが、その中から「炎上」が本性とされたのは、水気の本性と、上昇・下降 というように対応させる為のようだ。
火が「赤」で象徴されるのは、万人の知るところであろう。
火の熱さを方角で表現するとすれば、「南」しか考えられない。
同様に、季節においても、灼熱の「夏」が一番しっくりすると考 える事も、自然に納得できよう。
「火気」は、旺気を司どる。
3. 土気
陰陽五行において、土の本性を「稼穡」とする。
陰陽五行は、中国で生 まれた事を思い出して頂きたい。中国の大地は、黄砂で覆われているのである。
毎年、三月から五月になると黄砂が天空を覆い、下降する現象が見られる。
この事から、土をイメージした色彩は「黄」であるとしてよいだろう。
また、中国の大地は広大で、それは無限の広がりを持つ天に匹敵する、 と古代中国人に認識されていた事から、天に対する地というイメージより、 方角は「中央」となる。
この事から、季節は、季節同士を結ぶ役目を果 たしている「土用」という事になる。
4. 金気
陰陽五行において、金の本性を「従革」とする。
「従革」とは、改まることを指す。
金とは金属のことを指し、冷たく光る金属は「白」をイメージする。
金気は、五気の中で最も固い。そこで、季節は「秋」。
秋は万物が結実 する時期で、且つ、枯死に向かう時期である。
方角も、太陽が沈む方角、 「西」が適当だろう。
金気は「殺」のイメージがあり、木気の「生」の イメージと対応している。
「金気」は、老気を司る。
5. 水気
陰陽五行において、水の本性を「潤下」とする。
下方へと流れ、暗く、低いところに集まり、冷たいものというイメージから、当てはまる色彩は「黒」。
同様に、そのイメージから、その季節は、生物のほとんとが活動を停止 していて、一年のうちで一番暗い時期である「冬」である。
方角は、閉ざされた、冷たくて暗いイメージの付きまとう「北」となる。
「水気」は、死気を司る。
次に、五行と五行の関係をみてみようと思う。
たとえば、季節の中の「春」と木火土金水との関係を考えてみよう。
春と木の関係
先ほどの表でも分かるように、これらは同じ五行である。つまり、木は活気付き、すくすくと育っていく。
ここから、春における木は、「旺気」の中にあると考えられる。
春と火の関係
「木生火」より、春の木気が火を相生する。このことから、火は木によって一層燃えることができる。つまり、木は火を助けているのである。
故に、この火は「相気」の中にあると考えられる。
春と土の関係
「木剋土」より、春の木気が土を相剋する。このことから、土は木に養分を奪われる。つまり、養分を奪われた土に残された運命は死なのである。
故に、この土は「死気」の中にあると考えられる。
春と金の関係
「金剋木」より、春の木気が金に相剋される。木は金によって運命を支配されている。つまり、木は金の囚われの身なのである。
故に、この金は 「囚気」の中にあると考えられる。
春と水の関係
「水生木」より、春の木気が水に相生される。植物・木は、水が命の源 であるため、木に水は奪われてしまう。つまり、水は老い衰えてしまうのである。
故に、この水は「老気」の中にあると考えられる。
この様に、五行と五行の間には、「旺・相・死・囚・老」という五種類のパターンが ある。
これを運命や方角に当てはめると、それぞれ、5種類の運命、方角があるとい うことになる。
唯一安倍晴明が書いたことが確実視されている書、『占事略決』にも、同様の原理が書かれている。
しかし、この様な原理は、あくまで原理であって、 実際の占いはもっと複雑だ。
五行は、「十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)」と「十二支 (子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)」に変換されて利用され、また更にそれらを組み合わせて六十干支とし、それを利用して五行同士の複雑な相互間系を読み取っていった。そこに更に、八卦や七曜などが加わり、それに伴う理論も加えられながら陰陽道を解 き明かしていくのである。
その様子は、さながら迷宮のようである。