大鏡 六十五代 花山院
現代語訳
| 花山院の略歴 | |
| 次の天皇は花山天皇と申し上げました。六十三代 | |
| れいぜい | |
| 冷泉 | 天皇の第一皇子でいらっしゃいます。母君様は |
| かいし | これまさ | |||
| 藤原 | 懐子 | と申し上げます。太政大臣の藤原 | 伊尹 | 公のご長 |
| 女です。この天皇は冷泉天皇の世である安和元年 |
| (九六八)、十月十六日に、母方の祖父藤原伊尹の一条の |
| お邸でお生まれになったとあります。これは今の世尊寺の |
| ご誕生の日はちょうど、父君様冷泉院天皇の大嘗祭に先立 |
| つ御禊の当日の事でございました。御歳二歳を迎えられた |
| とうぐう | ||
| 安和二年に | 春宮 | にお立ちになり、天元五年(九八二)二月 |
| えいかん | |
| 十九日に御年十五歳で御元服なさいました。そして、 | 永観 |
| 二年(九八四)八月二十八日、天皇の位にお付きになりまし |
| た。御年十七歳でいらっしゃいました。その二年後、余りの |
| かんな | ||
| 意外さに驚くばかりでございましたことは、 | 寛和 | 二年(九八 |
| 六)六月二十二日の夜、人にもお知らせになられずに、ひそ |
| かざんじ | ||
| かに | 花山寺 | にお出でになりまして、ご出家、入道しておしま |
| いになられました。この時御年十九歳、ご在位は二年でし |
| た。その後は二十二年ご存命でいらっしゃいました。 |