プルトニウムは1940年にアメリカの科学者シーボーグによって発見された原子番号94の元素です。冥王星(プルトー)にちなんで名がつけられました。あまりにも重い原子なため天然には極微量しか存在せず、人工的に作られました。プルトニウムには2つの毒性があります。放射線学的毒性と化学的毒性です。化学毒性は他の重金属と同じくらいですが、放射線学的毒性は特に大きくプルトニウム241以外は
アルファ線を出します。その放射能は非常に強く体内から排出されにくいため大変危険です。現在の核兵器に使われているのはプルトニウムです。長崎におとされた原子爆弾はプルトニウム爆弾でした。また、ウランより核分裂しやすく臨界量は12.5kgです。このように危険な物質なので
国際原子力機関(IAEA)が査察・管理をして軍事転用されないようにしています。またプルトニウムの半減期は2.4×10**4年と長くその管理方法も問題になっています。
また、プルトニウムには質量数238、239、240、241、242など15の同位体があります。軽水炉でウラン燃料を燃焼させたとき質量数235のウランは核分裂を起こし中性子を放出します。この時発生した中性子を核分裂しないウラン238が吸収することによってウラン238からウラン239になります。このウラン239が半減期23分で
ベータ崩壊してネプツニウム239となり、もう一度ベータ崩壊してプルトニウム−239になるのです。さらにこのプルトニウムが中性子を吸収するとプルトニウム240、241、242が生成されます。すべてのプルトニウムはこのようにして作られているのです。このなかで普通の原子炉(軽水炉)で核分裂をするのは質量数239と241のプルトニウムで核燃料として使用できます。こうして原子炉の中でできた核分裂をするプルトニウムは現在の原子炉でも燃料として原子炉に装着したウラン燃料とともに発電に利用されており、発電量の30〜40%はプルトニウムの核分裂のエネルギーによるものになっています。
ウランについて
ウランは比重18.7の金属で自然に存在する元素の中で一番重い元素です。原子番号は92でいくつかの同位体が存在します。天然ウランはウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%、ウラン234が極微量含まれていますが、これらはすべて
アルファ線を放出します。ウランには放射能がありますが放出するのがアルファ線なので、放射線による障害よりも化学的な毒性の方が問題があります。天然ウランは
ベータ線や
ガンマ線も放出していますが、これらはウランから生成された別の物質から放出されるものです。天然ウランが放出するガンマ線のエネルギーは小さく、ウランが吸収する量も多いため、外部からの
被曝による危険は少ないといえます。
また、ウラン235は核分裂をする原子で、その臨界量は20%の濃縮ウランで約20kgです。ウラン235は低速な中性子を吸収するとウラン236になりすぐに核分裂をします。この時に発生するエネルギーが原子力として利用されているものです。ウラン238は核分裂しませんが中性子を吸収することでプルトニウムの原料となっています。
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