「はははは、よくぞ抜かした!」
笑いながら、その武士が橋の上から瓜を投げ与えた。少年が瓜を抱えて、
一目散に土手を駆け上がる。瓜にかぶりつきながら、野武士とともに
歩き出す。若い野武士の大将が顔を振り向け、
「おい猿。なぜ付いて来る?」
やはり誰の目にも、猿に見えるらしい。
「猿に餌をやったら、なつくんだわ。」
とうそぶきつつ、大口開けて瓜を食らっているこの少年が、後に、丸ごと
天下を飲み込むとは、無論知ってるやつがいるものか。

「よし、付いて来るがいい。」
と、笑ってこの少年を拾い上げたのが、尾張の海東軍では音に聞こえた、
蜂須賀小六正勝と言う野武士の頭だった。小六はこの時二十一才だ。