「おぬし、名は何と言う。」
 歩きつつ、野武士の一人が尋ねる。
「天下取りの、日吉丸だ。」

「天下取りだと?」
「ひははは、でかい口を叩きやがるぜ、この小僧は。」
 幾人かが、声立てて笑った。
「小僧とは何だ。大根は小さくても、小根とはいわぬぞっ。」
 日吉丸が、怒鳴り返す。
「おぬし、口から先に生まれたな。」
「おう、足から先に生まれたら、母親が苦労するもんでよ。」
「その母親は、どうした?」
「尾張の中村で、百姓をやっとるで。」
「おぬし、年は幾つだ。」
「もうじき十五だ。」
 話つつ歩くうちに、野武士の根城に辿り着く。こうして、日吉丸、 蜂須賀の屋敷に転がり込んだものだ。



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