それからひと月もたって、さらに信長を感心させたのが長短槍試合の一件だ。
家臣らが広間で談義のさなか、長い槍と短い槍ではどちらが戦に有利かという話題になった。
「それはもう短い槍に限る。長い槍は扱いにくうござる。」
織田家では一番の槍の使い手、片桐孫四郎が言う。なおも孫四郎、
「第一、短い槍は軽くて、すばやい動作で相手を突くことが出来るからのう。」
ふむふむ、もっとも。と他の家来どもがうなずいている。
「へーえ、ほんまかいな。私は断然長い槍のほうに分があると思いまするが。」
そう口をいれたのが藤吉郎だ。