「よう猿。久しぶりだな。」
 すっかり頭目らしくなった蜂須賀小六が、顔をほころばせている。あの時藤吉郎、 三年も世話になった蜂須賀党をいきなり飛び出したが、それも今では笑い話だ。
「あと二、三日もすると、敵地に忍ばせておいた細作から清洲城に知らせがくる。」
「分かりました。今川義元が、どこの城に泊まか、それを知らせてくるのじゃな。」
「さよう。その知らせを受けると、直ちに出陣じゃ。その方らも家の子郎党引き連れて、 まずは熱田の神宮へと駆けつけて頂こう。」
「よろしい。承知した。」
と、生駒屋の奥座敷で、野武士らとの作戦会議が続く。
 それから三日目の夜、いよいよ細作が、今川義元の泊まる城を知らせてきた。 細作というのはスパイだと思えばよろしい。
「申し上げますっ。今川義元、十九日の泊まりは大高城で御座りまする。」
「よしっ、大義であった。」



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