二百人ばかりの足軽を引き連れて、まずは海東群の蜂須賀小六を尋ねたものだ。 小六も今では彦右衛門正勝と名乗って、濃尾平野のすみずみまで勇名をとどろかせている。
「おぬしもあつかましい奴だな。信長殿より借り受けた足軽だけ連れてきて、 後はわしが集めた野武士を指揮して、戦をしようというのか。」
「そうよ。藤吉郎には一兵もないからな。」
「よし、承知した。尾張中の野武士や地侍が、墨俣をねじろにして世に出るかどうかの大博打、打ってみようぞ。」
 かくして藤吉郎、彦右衛門正勝の率いる野武士たちと一緒に、木曽川の上流へと向かう。 瑞竜寺山にとりつき、雨天の中でせっせと木を切り出し始めた。
「よいか。山の中で材木を切りそろえ、かわべりでいかだに組むのじゃ。」
「へい、がってんだ!」
「墨俣までいかだを流したら、すばやく城を築くのじゃ。兵も柵も組み立てさえすればあっという間に完成するようにしておけ。」
 今でいうプレハブ工法を、藤吉郎は試みようとしているわけだった。 働いて、働いて、やがて五日目の夜半となる。
「よしよし、もう十分じゃ。」
藤吉郎、かわべりを埋め尽くすほどのいかだを満足そうに見やり、ついで、声いっぱいに号令する。
「ものども、いかだを流せ!」
「おーう!」



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