「おぬしのような切れ者だったら信長公も100万石を授けてくれるだろう。」
「織田家のどこに100万石もの領地があると言うのだ。」
「そっ、それは今から増やすのじゃ。今から領地を増やしてそれを
おぬしに授けるつもりなのじゃ。」
「ふっ、夢物語か・・・笑止」
判断力 −3ポイント
「いっ、今のは嘘じゃ。本当は一万石もやらん!おぬしは大名にはさせぬ。いや
おぬしは生涯、大名にはなれぬ。大名になるには、なるだけの愚かさが必要なのだ。
竹中半兵衛は、その愚かさにかけておる。おぬしはわしの軍師として働け。
そしたら出世は、おぬしの代わりに、この愚かな木下藤吉郎がしてやろうぞ。」
半兵衛、笑い声をもらしている。方言めいた藤吉郎の言いぐさだけど、どこまでも筋がとおっている。
「よろしい。どのような大河も、支流を集めて成り立つ。同じ流れをつくらなくては、天下のことはどうにもならぬ。」
と、竹中半兵衛である。ついで、
「正直のところ、木下殿が私に天命を授けたとしか思いようがない。」
「そうか!やっぱりおぬしは、賢い男じゃ。そうか、そうか。」
「この竹中半兵衛、ただいまから木下藤吉郎殿の軍師として、存分に働いてみせましょう。よろしくお願いつかまつる。」
藤吉郎、つっころぶようにして庭へ飛びだすと、地べたに額をこすりつけ、
「ありがとうござる!いや、ありがとうござる!」
家来となった男に向けて、くりかえし礼をのべている。
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