「いよいよ作戦開始じゃ!ものども、続け!」
まずは柴田勝家のてぜいが長良川をわたり、稲葉山の城下へとなだれこんだ。
町じゅうに火をつけて回る。こうしてすっかり焼け野原となった頃へ、ゆうゆうと織田の大軍が乗りこむ。
一方、稲葉山の斎藤勢である。こうなったら三ヶ月でも半年でもろう城戦で対抗する気だ。ところが織田勢、城には見向きもしない。
「おかしいのう。やつら、まったく戦をしかけてこないが・・・・・・。」
「焼きはろうた町に、また家など建てておるが、一体、どういうつもりじゃ。」
「やあやあ、織田の腰抜けども。弓矢と鉄砲をおみまいしてやるから、攻めてこい!」
物見やぐらの上から、武士の一人が挑発してみる。すると、
「攻めたりしないから、安心しろやーい。わしらは戦をしに来たのではないわ。美濃へ引っ越してきたのだ。」
と、このような返答だ。
「なにい、引っ越してきた?」
「そうよ、わしらはここに、立派な町をこしらえるのさ。何年もかかるから、
おまえらろう城兵は、ほっておいても飢え死にするワケのキヨマロよ。」
「いくら美濃の侍だからというて、ミノムシみたいにいつまでも稲葉山の城にぶら下がっておらず、さっさと降参して、わしらの仕事を手伝ってくれないか。」
織田勢は、つとめてやさしい口ぶりで降伏を呼びかけている。
二十日もすると町人たちはすっかり安心して、一緒に街づくりにせいを出しはじめる。