いろんなことを言う奴がいて、すっかりまとまりを欠いている。
 これがすべて、茶碗の中の嵐というか、城内の騒ぎだから、織田勢には、城だけがデーンとも何とも言わずにそびえているようなものだ。
結局斎藤勢は、自ら大手門を開き、
「降参だ、降参だ。」
稲葉山城は苦もなく落ちてしまった。
 咲きほこるさくらの下に床机をすえ、信長が腰掛けている。逃げそびれた斎藤竜興が、信長の前に引き据えられた。
「竜興っ。」
「そちの命だけは助けるようにと、わしはお濃と約束しておる。 二、三人の供をつけてやるゆえ、どこへなりと行くが良い。」
「あ、ありがたき幸せ・・・・・・」
 こうして斎藤竜興は、長良川から船に乗り、下流の長島へと落ちのびていったものだ。
 いならぶ織田家の家臣と斎藤家の家臣らに、信長はおだやかな表情で訓示をたれている。



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