「比叡山を焼け!」
信長がほえたてた。
明智光秀が顔色を失い、
「比叡山は天台宗の総本山。宗教と学問の聖地でござりまする。
そのようなことをすれば、日本中の僧侶を敵にまわすことになりかねません。」
「だまれっ、キンカン頭!宗教や学問が、なにゆえに槍や刀を取って戦をしかけてくるぞ!
人を殺せとすすめる宗教など、焼いてしまえ!」
「仏をたてまつる比叡山を焼き払っては、末代まで極悪非道の名をとりましょうぞ。
なにとぞ、こればかりは思いとどまりくださりませ。」
「だまれっ、光秀!」
信長は手にした扇子で、したたかに光秀の顔を打った。
「比叡山の坊主どもが、たみ百姓のために何をした!
信長が上洛して、はじめて庶民を安心させ、国家安泰のために骨身をくだいておるのだ。
神仏は、この信長じゃ!」