すると黒田官兵衛が、
「その上、羽柴筑前守秀吉に追いつめられてのむほん・・・・・・ということでござるかな。」
 おだやかならぬことを言い出した。
「何じゃと、官兵衛。このわしが、光秀を追いつめて謀反にはしらせたというのかっ。」
 秀吉が顔をふりむけ、眼を光らせた。
「何のこんきょがあって、そのようなふらちなことをぬかしくさるぞ!」
「まぁ、気をしずめてお聞きなされ。」
と官兵衛は、たなごころを示し、
「殿は、池田どのと、明智どのに手紙を書いてござろう。」
「おお、書いた。二人が備中へ出陣してくるというので、そのあいさつじゃ。ほう輩として、当然であろうが。」
「池田信輝殿への手紙はともかく、明智どのに、殿はこうお書きなさったであろう。 山陰の地は手をつけず、ご貴殿のために残してある、と。」
「明智殿はそれを読んで、おん大将から近江の領地をとりあげられ、 まだ手にいれてもいない山陰の地に追いやられるものと思った。 とのの手紙がそう思わせ、謀反にはしらせた。ということになりませぬかな。」
「お、おのれ、申すにことを欠いて、このわしに主殺しの汚名をきせるとは。 なぐってやろうか。いや、ゆるせん。斬ってやる!」
 

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