六月十三日の夜明け前、
「天王山をとれ!」
明智光秀が下知した。いっぽう、羽柴秀吉も、
「天王山をとれ!」
二人が同じ号令を発したものだ。
天王山のてっぺんから弓と鉄砲をあびせてやれば、羽柴の大軍が山崎街道をつうかするのは不可能となる。
「通してなるものか。」
光秀のほうは、松田太郎左衛門好正のひきいる鉄砲隊三百人だ。
「通ってみせるぞ。」
の秀吉のほうは、堀尾茂助吉春のひきいる鉄砲隊が二百人と、弓取りが百人だ。
「天下の分け目は天王山にあり!」
とばかり、てっぺん目指してかけのぼる。
