さて、信長と吉乃の間に生まれた長男、伊勢の織田信雄である。
いや、今は北畠の養子だから、北畠信雄だ。
「わが父、信長は、尾張の百姓のせがれに天下を取らせようとして、二十年も苦労してきたわけではないぞ。思いあがった筑前め!」
本来なら、父の信長が天下を取るはずだったのに・・・・・・と、秀吉の成功をねたみだした。
あの巨大な大阪城を見るにつけ、腹がたって仕方ない。
そこで信雄、たびたび徳川家康に密使をさしむける。
「たがいに全軍をもって、筑前をうちまかしてやろうよ。な、そうしようよ。」
としきりに誘ったものだ。家康にとっても、秀吉は、このままのさばらせておくと、
やがて徳川の家を飲み込んでしまう怪物に思えてならない。いつかは、一戦交えぬわけにはいかない相手だった。