「やい、あほ猿!お猿のけつは何で赤いのでしょうか。それは、おイタをして、お母さんの猿にたたかれたからでーす。」

「ひっ、はははは。」
茂助が笑った。
「たわけ!主君が馬鹿にされておるのに、笑う奴があるかっ。」
秀吉が怒鳴りつける。
「ごめんなさい。」
茂助が謝りながら、笑いをかみ殺している。
「殺すなよ。今は生かしておいて、あとで八つ裂きにしてやる。」
と、秀吉も内心はものすごく腹を立てている。茂助が、
「八つ裂き?家来にするのでは?」
「家来にするのはやめた。八つ裂きじゃ。」

本田平八郎忠勝である。
「猿っ、またあとで会おうぞ!」
どうあっても羽柴勢が取り合わないので、二百の手勢とともに走り去ったものである。
先をこして家康の隊に合流するつもりらしい。