「戦は、勝ちいくさでござったそうな。御大将はもう兵をまとめて、小幡の城に休んでおられまする。」
「何、休んでおる!」
平八郎、手勢を率いて、小幡城へと馬を急がせる。
「やいやい。のんきおやじの殿は、どこにおるぞ!」
わめきながら大手門をくぐる。馬を乗り捨て、中庭の幕舎に飛びこむと、
「やい殿っ、目の前に天下が転がっておるというのに、休息とは何事じゃ!」
「おお、忠勝か。そちもいっぱい飲め。」
家康が言いかえす。
「酒など飲んでおるときか!俺がまんまと筑前を長久手におびき出したというのに、今討たずに、いつ討つと言うのじゃ。」
「まぁ落ち着け。」
「何が落ち着けだっ。今筑前は長久手におるのじゃ。
それもたったの七、八百で。今なら天下が取れるのじゃ!」
「その通りじゃ。」
「なら、ただちに城をうってでようぞ!」