きっかけ
私たちは、サイト制作中にアレルギーについて調べる過程で、アナフィラキシーショックの応急処置に用いられるエピペンというものを知りました。そしてそのエピペンについて詳しく知るべく、本校(慶應義塾湘南藤沢中・高等部)の保健室に訪れました。
エピペンとは
エピペン(Epinephrine autoinjector)とは、アナフィラキシー症状を緩和するための携帯型注射キットです。太ももの前外側に強く押し付けると、内蔵されている注射針と薬剤が飛び出し、筋肉内注射が行われます。アナフィラキシー症状が発生したときエピペンを所持していれば、患者か周囲にいた第三者が簡単に注射することができます。エピネフリン(アドレナリン)を注射することで、毛細血管を収縮、気管支を広げる作用があります。一つ一つシリアル番号が発行され、厳格に管理されているそうです。
保健室に向かった経緯
最初のきっかけは、私たちの班のコーチの「学校の保健室の先生のもとに訪問、見学、質問させていただいたらどうか」という発案でした。訪ねることによって保健室にエピペンの練習用キットを見せていただける他にも、身近にいる医療関係のプロである校医の方々の知識や体験談を聞くことができます。私たちはそれらは有益なものであると判断し、保健室及び校医の方々への訪問を決めました。
エピペン練習用キット
保健室では、上の写真のエピペン練習用キットを貸していただけました。練習用キットとは、針と薬剤が内蔵されていない、“エピペンのキャップを外し、太ももの外側に注射する”という手順や動作を練習するためのものです。また、下の写真のような“エピペンの使い方”という説明が書いてある用紙も頂きました。
班員全員で用紙を見ながら、それぞれ練習用キットを試してみました。キャップを外し、しっかりと握り太ももに当て、強く力を込めて押し付ける、というだけの簡単な動作を行うと、エピペンの展開部が稼働し、練習はそれだけで完了しました。練習してみて分かったのですが、一連の動作は、症状が出た患者でも行いやすく、しかし誤って作動しないように設計されていました。特に押し当てたときに稼働する部分の調整が絶妙で、誤射防止のために強固な反面、本体の握りやすさも相まって、力が込められないという前提で練習してみてもしっかりと作動しました。また、本来なら注射針がついている部分がせり出すのも早く、患者の意識がもうろうとしていたとしても、一瞬で投薬が終わります。
※音声はでません。
コーチと校医の話
私たちの班のコーチである先生の父親はスズメバチに刺され、次刺されたらアナフィラキシーショックを起こしてしまう可能性があるため、コーチの父親が実物のエピペンを持っています。それ故エピペンに詳しいコーチと校医から、エピペンの基本的な情報や、シリアル番号の話を聞きました。保健室で過去エピペンを使用したことがあるのか聞いてみると、一度だけあると答えてくださいました。また、筋肉注射であるエピペン使用時に痛みはないのかと聞いてみると、「症状で朦朧としているのであまり影響はないらしい。そもそも針が出るのは一瞬だから投薬に影響はないから問題ない」と教えてくださいました。
練習用キットの使い道
また、コーチの話によって、私たちの学校には、教員がエピペンの使い方をこの練習用キットで学ぶ教員会議がある事が分かりました。万が一エピペンを使う機会に出くわした時、校医の方々しか使用方法を知らないのでは処置が間に合わない可能性があります。また、夏休み期間など保健室が閉室している期間も多くあります。それでも、エピペンを使用する状況は学校生活のいつでもどこでも急に起こり得る事なので、教員会議で各教員だけでなく教員同士の連帯や知識の共有を定期的に行う事はとても大切であると感じました。
感想
保健室を訪問する前はエピペン注射という存在を書籍やインターネットで知っただけだったのですが、今回訪問してみて「百聞は一見にしかず」を体験する事ができました。学んだ通り、確かに操作方法はとても簡単でしたし、持ち運びに耐えられる頑丈さもありました。ただ、練習用キットを実際手にした時、本物でないはずなのに恐怖感が出てきて脚に当てる事を少し躊躇ってしまいました。また、エピペンのキャップを外すという行程がある事を初めて知りました。何回文字で学んだとしても実際の体験には勝てないなと強く感じました。校医や教員の皆さんだけに頼るだけでは無く、自分たちも使用する可能性・使用される可能性を考えてエピペンの知識を持ったり、体験をしたりする事がとても良い経験になったと思いました。(高2・N)