麒麟

中国の瑞獣で、明君・天子の出現時に姿を見せる。体は鹿に似ていて、尾は牛のよう、蹄は馬に似ており、背には五色に輝く鬣(たてがみ)があり、頭は丸く、その上には肉に包まれた一本の角を持つ、というのが本来の麒麟らしい。が、現在では全身黄金の毛に覆われているとか角は二本あるとかいった異説が付け加えられている。その行動形態を記した古書には、「頭上の角は仁懐の意を表し、歩く調子は律慮に叶い、真円状に歩き、曲がるときには直角に正確に曲がり、注意深く土を選んで足を下ろし、平らなところにのみ佇み、決して群れをなさず、遠方へ行かない。生き物を口にせず、生草を踏まない。」とある。

上記のような特徴は、麒麟が「観念から出た規範的な」空想霊獣であるからだとの指摘がある。その姿の具体的なモデルは、といえば間違い無く鹿なのだが、それも鹿が聖人君子の出現を表すような神獣として相応しい神聖さを秘めているからだろう。そして、その存在自体はやはり観念から生じたものであろうと私も思う。

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