九尾の狐

金毛白面(こんもうはくめん)で九つの長い尾を持つ狐。美女に化けて時の権力者に近づく。この狐は世界史実中に過去三回現れており、インドから中国、そして日本へと渡ってきたものと言われている。いずれの国も九尾の狐が現れると王や帝が病に倒れたり疫病が流行ったりしているため、傾国の妖怪といわれ、国を滅ぼす妖怪とされている。日本では後鳥羽上皇の頃に現れ、その聡明さと美しさ故に上皇の寵愛を一身に受けた。明かりが消えた折にはその身から光を発し、辺りを照らして見せたという。しかしある時、上皇が病に倒れ、不審に思った陰陽士にその正体を見破られ、やがて射殺されてしまう。その亡骸は東大寺正倉院に酒天童子の首などとともに収められているというが、真偽は定かではない。その後九尾の狐の怨念はある山の一つの石に宿り、近づくものを皆殺しにしてしまうようになる。それゆえ人はこの石を「殺生石」と呼んで恐れた。世に言う「殺生石伝説」である。

しかし、実際は、この石に近づいたものが死ぬのは火山から出る有毒ガスだといわれている。本当に狐は国を滅ぼさんとしていたのか、それとも単に身の安全を得ようとして時の権力者に取り入っていたのか、真意は謎である。

因みに、伝説では九尾の狐の死後病状が回復したとされる後鳥羽上皇だが、実際にはその三年後に亡くなっている。

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