雪女郎
雪女、といえば昔話でも有名な妖怪であるが、殆どの方は単に「雪山に棲んでいて美しい女の姿をした妖怪」「出会うと氷漬けにされて殺されてしまう」位のことしかご存知無いのではないかと思う。
確かにその通りである。雪女の基本的特徴は、と問われれば上記の特徴が最も一般的なのである。が、雪女には他にも幾つかの特徴を示す説話が残っている。例えば、雪女は子供を胸に抱いていて、その子供を通りすがりの旅人に抱かせる。旅人がその子を抱いてやるとそのまま旅人は凍え死んでしまう、というものである。しかし、ある説話によると、この子供は次第に重くなっていき、それを雪女が認めるまで抱きつづけていることができたなら、その人は死なずに済む、という。他の説話によると、雪女は紅い雪が降る時期に雪で小さな人形を作り、それに息を吹きかけることによって魂を吹き込み、子供にするという。また、雪女に息を吹きかけられるとその場で絶命してしまう、とも言われる。
いずれにしても恐ろしい妖怪には違いないが、雪女も恐らくは雪に対する日本人の恐怖心というものを具現化したものであろう。雪は美しいと同時に、全てを凍えさせ凍らせてしまう残酷さを持つ。特に豪雪地帯に住む人々にとっては、雪は生命を危機に晒す危険性を持つ恐ろしいものである。更に、雪のひんやりとした冷たい美しさは浮世離れした美女を想像させるには十分だったのではないかと思われる。これらの「雪、或いは猛吹雪に対するイメージ」のようなものが雪女として現れたのではないだろうか。
また、 昔の人が冬の雪山で吹雪に遭遇すれば死は免れ得ないものであったろうし、そのようなところを出歩かねばならなかったのは行商のため街へ出る男が多かっただろう。そこでかの有名な「雪女」の物語が出来上がる、という訳である。