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翌年、二度目の妻としてセバスチャンはマグダレーナを迎えました。セバスチャンは36歳だったのに対し、マグダレーナは20歳でした。子供たちはなかなかマグダレーナになつかず、マグダレーナはいつも悩んでいました。そんなマグダレーナをセバスチャンは彼女が落ち込むたびに慰め、励ましました。「マグダレーナ、子供たちには暖かい家庭が必要なんだ。そして僕にも。年は若くても君は素晴らしい女性だ、今に子供たちも僕が君と結婚したわけを分かってくれる。だから頑張っておくれ。子供たちとそして僕のために」そう言ってセバスチャンはマグダレーナを支えました。しかしなかなか思ったように子供はなつかず、中でもフリーデマンはマグダレーナのことをお母さんとは呼ばず、反抗的な態度をとり続けました。 そんなある日、セバスチャンは練習しておくようにと与えた曲を練習しなかったフリーデマンに対し「父さんはこの曲を練習しておくように言ったはずだ!それなのにさっきからつまずいてばかりいるね。」フリーデマンはマグダレーナの顔色を伺い「今日一日マグダレーナさんがいろいろ用を言いつけるから練習する暇がなかったんだ!」その言葉を聞きセバスチャンは「なぜそんな嘘をつく、父さんは嘘つきが一番嫌いだ。」そう言い残し部屋を出ました。
夕食の時もセバスチャンとフリーデマンは一言も交わさず険悪な雰囲気が続きました。その晩、マグダレーナはフリーデマンの部屋に行くとフリーデマンは布団の中で泣いていました。「フリーデマン・・・ 後悔しているのね、正直に謝れば許してくれるわ。」そうして謝る気になったフリーデマンはセバスチャンの部屋に向かいました。「ごめんなさい、父さん。昼間言ったのは嘘です。ぼ、ぼく 怠け者と思われたくなくてあんなこと言っちゃったんだ。自分のしたことがっとても悪いことだって分かったよ。ごめんなさい。もう二度としないよ。」その言葉に心を許したセバスチャンは「よしいい子だ。さぁ、もう遅いからお休み。」セバスチャンはフリーデマンにかけた一言にフリーデマンは安心し、床につきました。そしてマグダレーナが部屋を出るとき小さな声で「あの・・・ ありがとう、母さん。」そう言いました。その言葉を聞いたマグダレーナは嬉しくなり、セバスチャンのところへ急ぎそのことを伝えに行きました。「今、フリーデマンが私のことを母さんって呼んだの。」そのマグダレーナを見てセバスチャンは「よかったね。今、フリーデマンのためにクラビア小曲集を作っていたんだ。フリーデマンは音楽の才能がある、よく練習さえすればきっと私以上の音楽家になる。」それを聞きたマグダレーナは驚きを隠せず「あなた以上ですって!!そんなことのできる人がいますの!」セバスチャンは笑い「おいおい僕の可愛い奥さんはまさか僕が世界で一番偉大な音楽家だと思っているんじゃないだろうね。君こそ世界一の奥さんだ!」そう言ってセバスチャンは大笑いしました。 |