不滅の恋人への手紙              1枚目

私の天使、私のすべて、私自身よ。――きょうはほんの一

筆だけ、しかも鉛筆で(あなたのえんぴつで)――明日までは、

私の居場所ははっきり決まらないのです。こんなことで、なん

という時間の無駄づかい――やむをえないこととはいえ、こ

の深い悲しみはなぜなのでしょう――私たちの愛は、犠牲

によってしか、すべてを求めないことでしか、成り立たないの

でしょうか。あなたが完全に私のものでなく、私が完全にあ

なたのものでないことを、あなたは変えられるのですか――

ああ神よ、美しい自然を眺め、あなたの気持ちをしずめてく

ださい、どうしようもないことはともかくとして――愛とは、す

べてを当然のこととして要求するものです。だから、私には

あなたが、あなたには私がそうなるのです。でもあなたは、

私が私のためとあなたのために生きなければならないこと

を、とかくお忘れです。もし私たちが完全に結ばれていれ

ば、あなたも私もこうした苦しみをそれほど感じなくてすんだ

でしょう。――私の旅はひどいものでした。きのうの朝四時

にやっと当地に着きました。馬が足りなかったので、駅馬車

はいつもとちがうルートをとったのですが、まあなんともひど

い道でした。終点の一つ手前の宿駅で夜の通行はやめた

方がよいと言われ、森を恐れるように忠告してくれたのです

が、それはむしろ私をふるい立たせただけでした――でも

私がまちがっていました。もし私がやとったような二人の馭

者がいなかったら、底なしにぬかるんだ、むき出しの田舎道

のために、きっと馬車がこわれて、私は道の途中で立ち往

生してしまっていたでしょう――エステルハージ(侯爵)は、

別の通常ルートをとり、馬八頭で同じ運命にあった由、私の方

は四頭立てだったのに。――とはいえ、幸運にも何かをのり

こえたときいつも味わうような、ちょっといした満足を覚えま

した。――さて、外面的なことから本質的なことにもどりまし

ょう。私たちはまもなく会えるのです。きょうもまた、この二、

三日、自分の生活について考えたことをあなたにお伝えでき

ない――私たちの心がいつも互いに緊密であれば、そんな

ことはどうでもいいのですが。胸がいっぱいです。あなたに

話すことがありすぎて――ああ――ことばなど何の役にも立

たないと思うときがあります――元気を出して――私の忠実

な唯一の宝、私のすべてでいてください、あなたにとって私

がそうであるように。そのほかのこと、私たちがどうあらね

ばならないか、またどうなるかは、神々が教えてくれるでしょ

う。――あなたの忠実な
 

解説

ベートーヴェンの死後、秘密の箱からこの手紙は発見されました。その手紙は細長い用箋5枚からなるもので、やがて「不滅の恋人への手紙」として、知られるようになります。

生涯結婚しなかったベートーヴェンにとって、この手紙は重要な手がかりでした。すくなくとも、彼が体験した相思相愛の女性との真剣な恋愛の唯一の証拠品です。しかし、この手紙には封筒がなく、発信地もあて先もわかりません。おそらく見つかったときからなかったに違いないでしょう。第一、出したはずの手紙が彼の手元にある自体、不自然です。書いただけでださなかったのか、それとも相手の手に渡った後返却されたのかわかりません。

 

真実の追究

ベートーヴェンの死後、遺言の執行人になっていたシュテファン・ブローニングは、アントン・シントラーとベートーヴェンの弟ヨハンの立会いのもと、晩年ベートーヴェンが親しくしていたヴァイオリニストのカール・ホルツの助けで、遺品を整理していて机の秘密の引き出しを発見、 そして三通の恋文が見つかりました。

恋愛関係ー人物紹介ー

テレーゼ
 ブルンシュヴィック家には、テレーゼ、弟フランツ、妹ジョセフィーヌ、末娘シャルロッテの四人がいました。そして、長女にあたいするのがテレーゼです。彼女はベートーヴェンの初恋とおもわれる相手であり、初めベートーヴェンは彼女にピアノをおしえていました。
 

ベートーヴェンとの出会いは1899年5月のある日、伯爵夫人につれられて、レッスンを受けたることになった事です。

 

ジョセフィーヌ

 ベートーヴェンとは、18日間交際という短い期間でしたが交際をしていた様です。

 

ジュリエッタ

ジュリエッタは、テレーゼ達叔母にあたります。ベートーヴェンはジュリエッタとも恋愛関係にな りますが、身分の違いから、当然のこととしてガルレンベルグ伯爵と結婚してしまいます。
 

 

 

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