32番
出典:「古今集」より
山川
やまがは
に
風
かぜ
のかけたる しがらみは
流
なが
れもあへぬ
紅葉
もみぢ
なりけり
春道列樹
はるみちのつらき
■口語訳
人里遠くはなれた山の中の谷川に、美しいしがらみがあった。 どうしてこんなところに、と近づいてみると、それは風に吹き散らされたまま、流れることができずに いる紅葉だったよ。
※しがらみ・・・川の流れをせきとめるために、竹やしばでつくられたさくのこと。
■作られたワケ
ある年の秋、列樹は比叡山のふもとの山道を都から近江へ越えて いきました。途中、川を渡りましたが、そのときに紅葉のしがらみをみて「美しいなあ。誰がつく ったのだろう。」と思ってこの歌を作ったそうです。
■作者プロフィール
春道列樹(?〜920)
従五位下雅楽頭新名宿禰の子で、九二〇年、壱岐守となりましたが、出発する前に死んだといわれます。 歌人としてもあまり有名ではなく、『古今集』などに五首のこっているだけです。