35番
出典:「古今集」より
人
ひと
はいさ
心
こころ
も
知
し
らず ふるさとは
花
はな
ぞむかしの
香
か
ににほひける
紀貫之
きのつらゆき
■口語訳
あなたのお心は、むかしのままかどうか、さあよくわかりません。しかし、これまで何度もたずねて 来てよく知っている、この初瀬の里の梅の花は、むかしどおりのかおりで美しく咲いて、わたしをむかえてくれていますよ。 どうかきげんをなおして、わたしを泊めていただけませんか。
■作られたワケ
春の始め、貫之は久しぶりに、お寺にお参りに行きました。いつも泊まっていた宿やに 泊まりにいきましたがお店の人は、ちょっと「御無沙汰でしたね」と怒っていました。それを見てこの歌を作ったそうです。
■作者プロフィール
紀貫之(868〜945)
平安時代を代表する歌人で、三十六歌仙のひとりです。
『古今集』の選者は四人いますが、その中心は貫之でした。 また、貫之の書いた『土佐日記』は、わが国の日記文学の代表作です。