38番
出典:「拾遺集」より
忘
わす
らるる
身
み
をば
思
おも
はず ちかひてし
人
ひと
の
命
いのち
の
惜
お
しくもあるかな
右近
うこん
■口語訳
あなたに忘れられるわたしのみの不幸せなど、わたしにとっては なんでもありましせん。ただ、いつまでもわたしを愛してくださると、神におちかいになった あなたが、そのちかいを裏切ったために神さまの罰を受けて、死んでおしまいになるのではないかと、 それが惜しまれてなりません。
※
人の命・・・恋の相手の命をあらわす。
■作られたワケ
敦忠と右近は愛し合っていました。でも、「敦忠は最近、他の女の人のところへ通っている」という噂を耳にした右近は、この歌を作ったそうです。
■作者プロフィール
右近(?〜?)
平安時代の中頃の女流歌人。右近少将藤原季蝿の娘で、父の官職の名から右近とよばれました。 醍醐天皇のきさき穏子に仕え、藤原敦忠や師輔ほか、多くの貴族たちと恋をかさねました。