44番
出典:「拾遺集」より

あふことの えてしなくは なかなかに             ひとをもをも うらみざらまし  
中納言朝忠ちゅうなごんあさただ

■口語訳

あなたと会って、愛し合うことが一度もなかったのならば、 かえってあなたのつれないしうちも、わたしの身の不幸も、こんなに恨むことはなかったでしょうに。 会ってしまったばっかりに、この苦しみにはとてもたえられそうにありません。

※なかなかに・・・かえって、むしろという意味。

■作られたワケ

朝忠は、笙(笛の一種)が上手で、大変女性にモテました。 でも朝忠が愛しているのは一人でした。ある日その人に会いに行きましたが、「もう来な いで下さい。好きな人ができましたから」と言われてしまいました。その時に有明の月を見つめながら、この歌を作ったそうで す。

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■作者プロフィール

中納言朝忠(910〜966)
三条右大臣藤原定方の五男。
大宰大弐などをへて、従三位権中納言にまですすみました。
三十六歌仙のひとりで、和歌や漢文にすぐれ、笙(笛の一種)の名手でもあったと伝えられています。

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