富士山を世界遺産に
富士山は、日本人にとって昔から大きな意味を持ってきたといえる。世界的にも有名な江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の「富嶽三十六景」を代表とした絵画などにおさめられているように、日本人の美意識の根源ともいえる。また、富士山を見て、「きれい」と思わない人はいないだろう。富士講など宗教的信仰の対象ともなってきた。そんな富士山を世界遺産にしたいと思う人は少なくないだろう。
「富士山を世界遺産にしよう」という運動は、日本が世界遺産条約に加入した1992年からあった。1992年に静岡・山梨両県の地元の市民・自然保護団体・地元のマスコミを中心に「富士山を世界遺産とする連絡協議会」(静岡県側14団体、山梨県側8団体、合計22団体が参加)が結成された。全国から246万もの署名を集め、1994年には富士山の世界遺産リストへの登録に関する請願」が国会に提出されるまでになった。
確かに富士山は日本のシンボルとして世界中で有名だが、それだけでは世界遺産登録の条件とはならない(世界遺産登録基準参照)。では、富士山はどのような「世界遺産に登録すべき価値」を持つのであろうか。
富士山の自然遺産的価値
2003年5月26日、世界遺産の候補地決定の、環境省と林野庁の検討会が開かれた。「富士山を世界遺産に」の動きを受けて、候補地に富士山の名前も挙がった。検討会は富士山の自然遺産的価値について、次の4つのことを評価した。
@単独の成層火山として、3000mを越える山は、世界的にも珍しい
A溶岩地形が多様
B裾野までの姿が美しい
C溶岩洞窟には希少な野生動物がすむ
しかし・・・
世界自然遺産の候補地として、富士山は選ばれなかった。それは・・
photo by M.J.Sonoda