「ハリツクンナ」についての考察

この物語は、竜の方から人間に悪さを働いたのではなく、人間に挑発されて人間を追うこと
になったお話です。現代風に言えば、おとり捜査による逮捕といったところでしょう。
なぜこんなことをしたのでしょうか。

話の中に、男を丸のみにする場面が出てきます。
人間を丸のみするとは、谷地(湿地)の中に年限がはまってのまれていくことを象徴している
ようです。こうした事故は、そこに住む魔物(この場合竜ですね)のしわざだと考えられていま
した。そのため、人をのむ魔物を前もって退治しておかなければ次々と犠牲者が出ることに
なります。こうして、先を見通す力をもつ人間によって事故を未然に防ぐ方策がとられたので
した。それが挑発して正体を出させて退治することだったのでしょう。
竜は、自分で物語っていますが、実は人間の英知を反対側からの視線で語ってくれたのですね。

人間たるもの英知を持たなければならないぞ、というメッセージでもあるのです。

ここで1つ。なぜヨモギの小さな矢で射られると、すぐに死んでしまうのでしょう。
これは、ヨモギには除魔力があると考えられているからです。またヨモギには数々の薬効があります。
物語の至るところにアイヌ民族の文化・伝統が隠されているのです。

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